第四部 自由という災厄
第十五章 怪物を生んだ権力のラビリンス - 一九九四年四月 -
(p.735−p.739)
ロシアという国は謎だらけの迷宮ではないか…
1つめの謎は、93年の選挙で突然勢力を躍進した、ウラジミール・ヴォリフォビッチ・ジリノフスキーです。彼は、94年時点で相変わらず議会内で他の議員を殴ったり、メディア記者のテープレコーダーを破損させたり、はたまた彼の父親はユダヤ人のヴォリフ・エイデルシュタインであるなどと報道されていますが、彼がどんな政治的背景と力学を持って政治の檜舞台に登場したのかは一切追及されていませんでした。
2つめの謎は、ソ連共産党の所有していた莫大な資金と資産は一体どこへ消えてしまったのか。91年8月クーデター未遂事件後は、エリツィン政権によって共産党は強引に非合法化され、共産党の財産の行方の追及は急務であると91年当時は宣言されましたが、政府と議会の対立激化に伴い、片隅に追いやられ、曖昧なままで放置されています。
そして3つ目の謎は、共産党が倒れ、市場経済への移行が進んでいると思ったら実は純然たるマフィア資本主義と化してしまいました。一方、西側マスメディアはロシアの民主政権を礼賛し、ロシアにおける組織犯罪の拡大や旧ソ連から引き継がれた巨大な汚職シンジケートの存在については極めて甘い認識しかしておらず、西側諸国からの多額の支援はザルで水をすくうように闇へと消えていってしまい、国民生活の向上や秩序ある市場経済の確立にも貢献していません。
この章では、一見バラバラにみえる上記3つの謎が複雑に、巧妙に絡み合っていることを著者は70点ほどの資料から説明を試みています。
概要を見る限り、ソ連共産党を日本軍部、マフィアをヤクザへと置き換えるとまるで敗戦直後の日本と同じように思えて仕方がありません。
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