第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
    §5 アメリカと「ドイツ帝国」の衝突
    ドイツのせいでロシア接近を阻まれた日本
    (p.70-72)

    ーあなたはアメリカ合衆国と「ドイツ帝国」の間の紛争を予言しているわけだが、確信はあるのですか?

     もちろん、確信はない。私は将来展望の視野を広げて見ているのだ。ここでは到来しうる様々な未来の一つを描いた。もう一つのシナリオは、ロシア・中国・インドが大陸でブロックをなし、欧米・西洋ブロックに対抗するというシナリオだろう。しかし、このユーラシア大陸ブロックは、日本を加えなければ機能しないだろう。このブロックを西洋のテクノロジーのレベルに引き上げることができるのは日本だけだから。
     しかし、日本は今後どうするだろうか?今の所、日本はドイツよりもアメリカに対して忠誠的である。しかしながら日本は西洋諸国間の昔からの諍いにうんざりするかもしれない。
     現在起こっている衝突が日本のロシアとの接近を停止させている。ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある。ここにアメリカにとってのもう一つのリスクがあり、これもまた、ドイツが最近アグレッシブになったことから派生している。

     ーそれなら未来のシナリオとして可能なものはいくつか存在するけれども、無限にあるわけではない。おそらく4つか5つだということですね。

    私は頭を空っぽにして精神を外に開くために、改めてサイエンス・フィクションを読み始めた。我々の政治的指導者に、同じタイプのエクササイズを強く勧めたい。何しろ、彼らはどこへ向かっているかも知らずに、実に決然とした足取りで歩いているからね。

     
     第1章は、ドイツのせいでロシア接近を阻まれた日本という衝撃的な見出しで終わりました。第二次安倍内閣の日本は、プーチン大統領の訪日をはじめロシアとの接近を試みようとしていますが、横槍が入ってうまく行っておりません。ロシアと日本との接近を阻止したいアメリカの意向を受けてのこと(日ロの接近警戒 米議会調査局が報告書:47news)と思われますが、ドイツとロシアとの対立により、ロシアと日本とが手を組まれると科学技術レベルが西洋諸国と同等レベルに底上げされる(本年に入っても、日本人科学者はノーベル生理学・医学賞、物理学賞を受賞していることから日本は高い基礎科学を有しています)ことを警戒しているという視点はトッド氏ならではの視点と感じました。

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