第2章 ロシアを見くびってはいけない
ロシアの安定化を見誤った西側メディア
(p.85-86)
ーすると、ロシアが活力を取り戻したのは驚くべきことだとおっしゃるのですね?
そうです。まさに驚きです。私の著書「帝国以後」はアメリカをテーマとして2002年に上梓した試論ですが、私はあの中に「ロシアの回復」と題する章を設け、その可能性を検討はしたのです。しかし、それを裏付ける統計的データは一切持っていませんでした。当時はロシア社会とその家族構造、および国家の構造についての自分の捉え方に、信を置いていただけでした。
このたびの驚きは、ごく控えめに言っても、我が同胞たちにはまったく共有されていません。近年私は、西側のメディア、特にフランスのメディアによる烈しいロシア叩きに苛立っています。中でも「ル・モンド」紙が中心でね、その錯乱たるや!ーそりゃ、誇張でしょう!
いや、全然誇張ではない。あれらのメディアは、ヨーロッパ大陸随一の軍事大国の驚異的な立ち直りについて、世論をまんまと目隠し状態にしたのです。そのようにして私は遠慮なく言わせてもらうが、西側メディアは我々を危険な状況においたのですよ。
CIAにしてからが、元々持っている偏見に欺かれてしまいました。20世紀の終わりの数十年における人口の激減に目を奪われて、CIAはロシアが早晩消滅するだろうと踏んだのです。
EUも同じです。EUはロシアとその隣国との間の新たな力関係の評価を誤りました。
こんなふうにして、ヘマとしくじりを繰り返し、われわれはクリミアの併合とウクライナにおける市民戦争に行き着いたのです。
上記グラフはロシアの実質GDPです。2000年に底を打ち、その後はリーマンショックによる減退こそみられたものの上昇を続けております。
(出典:世界経済のネタ帳)
上記のデータや、次回紹介予定のデータからは明らかにプーチン大統領によりロシアは国力回復し始めたことを示しているのですが、トッド氏によるとEUでのメディア報道はかなり偏向しており、ロシア叩きがひどかったために、ロシアの実像が一般の西欧諸国国民にみえてこなかったということでした。
メディアの報道は正しいとし、内容を鵜呑みにしていては、時に判断を間違えてしまう危険性が高いと感じました。そこで、一次情報や数値データなどを独自に調べることで裏付けを取るように心がけていきたいと考えています。この書籍紹介のスタイルも、書いてある内容についてはなるべく独自に調べて裏を取るよう心がけています。