第2章 ロシアを見くびってはいけない
経済指標は捏造できるが、人口学的指標は捏造できない
(p.82-85)
ーしかし、それらの統計はどの程度の信頼できるのでしょうか?
最高度の信頼です。人口学的データは極めて捏造しにくいのです。内的な整合性を持っていますからね。
ある日、誕生を登録された個々人は、死亡証明書にたどり着くまで、彼らの人生の節目節目で統計に現れてこなければなりません。だからこそソビエト政府は、かつて乳児死亡率が芳しくなくなった時、それを発表するのをやめたのです。
経済や会計のデータの場合とは全然違うのです。経済や会計のデータはやすやすと捏造できます。何十年もの間、ソビエト政府がやったように、あるいは、ゴールドマン・サックスのエキスパートたちが、ギリシャがユーロ圏に入れるようにその政府会計の証明書を作らなければならなかったときにやったようにね…。
経済数値の場合は、数字を弄る工作が行いやすいため粉飾決算という行為が度々発生するのに対し、人口データは捏造困難であり、仮に人口データがめちゃくちゃな場合はその国家が崩壊寸前である点に着目したトッド氏の鋭さを感じました。
なお、日本の人口動態は以下画像のように、2055年には65歳以上の人々が40%を占める社会になると推測されます。このデータは捏造困難で確かなものなのです。(出典:(一社) 吉村やすのり生命の環境研究所)