第四部 自由という災厄
第十三章 「文明の衝突」の虚実 - 一九九四年二月〜四月 -
<II>咆哮する欧州極右の群像
◆ドイツに伏在する秘密結社
(p.659−p.671)

前回に引き続き、トルコ人協会のチャクマゴグル会長とインタビュー概要を紹介します。主にジリノフスキーや極右勢力に対するドイツ政府の対応などについての内容です。

・ジリノフスキーは狂人であるが、彼の存在を軽くみてはいけない。ヨーロッパでは各国で5%程度は極右勢力の支持層がおり、ロシアに至っては二十数%もの人々がジリノフスキーに投票したからである。

・ドイツに駐屯しているロシア軍将兵(※2015年現在は撤兵済、インタビュー当時は旧東ドイツに旧ソ連軍の後継であるロシア軍が駐屯していた)の大半はジリノフスキーを支持している。ジリノフスキーのアジテーションは滅茶苦茶で、事実上の戦争煽動であるが、ロシア政府は見てみぬフリをしている。

・ドイツのフライは、政治家というよりもビジネスマンで、極右を看板にし、色々な商売に手を出してカネを稼いでいる小物である。ドイツの場合は極右は数こそ多いものの、オーストリアで現れた自由党党首ハイダーのようなカリスマ的なリーダーが今のところ見当たらないのが救いである。

・最も懸念しているのは、ドイツ政府が極右勢力と本気で戦おうとする姿勢をみせていないことである。私のオフィスの窓ガラスが割られたりパソコンが盗難されても、満足な捜査をしてくれなかった。ドイツという国が極右を潰せる状況にあり、戦い抜く覚悟のある民主国家であると信じたい。そう願っているが、外国人の締め出しの口実に極右を利用しているのではないか。

・我々はトルコに帰りたいのではなく、帰れないのだ。60年代当時は我々トルコ人労働者はドイツで労働力として歓迎された。トルコ人も一時的な出稼ぎであり、金を稼いだらトルコに戻って生活しようと考えていた。しかしトルコのインフレは当時激しかったため、ドイツに滞在する期間が長くなり、時が経ち、家族を呼び寄せ、子どもが生まれた。ドイツは血統主義のためにドイツ国籍が得られないまま子ども達がドイツで生活することとなってしまったのだ。

・ドイツ資本の本音は、高賃金労働者ではなく、長期に住んでいるトルコ人を追い出した上で新たにトルコからやって来る低賃金労働者を雇いたいのだ。旧東ドイツ人はドイツ人なので長期雇用するとトルコ人よりも高賃金を支払う必要があるのだ。

・PKK(クルディスタン労働者党)は我々にとってネオナチ以上に危険な組織だ。我々は民主主義と法治国家を支持しているが、彼らは自分たちの解釈に基づくコーランだけが法律で、国家の法律は法律ではなく、ネオナチ以上に過激なテロをドイツ含めヨーロッパ各地で繰り広げている。

・しかも、クルド人に対してはドイツはトルコ国内で抑圧されている「政治難民」という理由で我々トルコ人にはなかなか出さない行政からの各種許可が簡単に出てしまっているのだ。何故ドイツ政府は彼らの存在を黙認しているのか、未だに信じられない。

 

ドイツにおけるトルコ人問題は、PKKの部分を除くと日本における在日韓国・朝鮮人問題とかなり似ているように感じます。

民族の伝統の保持や、排外主義については社会が混乱するとより強調する勢力が現れるのだとも思った次第です。

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