第四部 自由という災厄
第十三章 「文明の衝突」の虚実 - 一九九四年二月〜四月 -
<II>咆哮する欧州極右の群像
◆ロシアに初めてあらわれた鉤十字を掲げるファシスト
(p.629−p.637)

ハーケンクロイツをシンボルとして掲げた「ロシアの民族統一」という政党の党首バルカショフとの、インタビューの概要紹介の続きです。

・思想的影響はシュペングラー、ニーチェ、ヒトラーから受けてきた。しかし最も理想とするのは1930年代の日本である。ドイツと日本が第二次世界大戦に突入したのは、ユダヤ資本が牛耳る国際社会の挑発のせいである。彼らは自立した民族国家、民族資本の存在を許さず、圧力を加え、戦争を仕掛けた。当時の日本がとった国家としての行動は自然な反応だったと思う。

・日本とドイツは敗北したが、民族精神までは死んでいない。ある段階まできたならば、ドイツのネオナチと日本の右翼との連携が不可避になると思っている。国際資本に対抗可能な民族は世界に3つしかない。この3民族だけが英雄的なロマンティシズムの精神を失っていないからである。ハーケンクロイツはアーリア人だけのシンボルではない。我々スラブ民族にとっても聖なるシンボルだ。

多数のロシア人を殺した侵略者である人物の政策や、シンボルをどうして崇めるのか一見すると分かりかねます。

しかし、著者岩上氏が「アーリア神話ーヨーロッパにおける人種主義と民族主義の源泉」という本を調べてこの原因を考察したところ、ロシアの歴史は882年に北方ゲルマン系民族を王としたキエフ公国の建国から始まっており、16世紀のロシア・イワン雷帝は権威を高めるために自身のルーツをモンゴル・タタールではなく、キエフ公国建国民族であるゲルマン系であると主張していたことを見出しました。

さらに、ハーケンクロイツについても、ユダヤ人が創造したユダヤ教より発展したキリスト教からの呪縛(嫉妬、畏怖)を乗り越えようとするために、別の宗教文化遺産を借りるためであると著者岩上氏は分析していました。

いずれにしても、ロシアで極右勢力が台頭したのは、もともとヨーロッパ社会にあったユダヤ人も対する嫉妬や畏怖に加え、社会が混乱すると自分は何者なのかという「起源」や「系譜」を求める動きが強く働き、その結果として神話とかシンボルとかを強引に作り、頼ろうとするのではないかと思った次第です。

つまり、自分自身の拠って立つところ、たとえば出身地、友人との交友関係、職場や現在住んでいる地域社会との関係が全くないと、心身ともに不安定になり、いわゆるネトウヨなどに走るのではないかと思います。

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