第四部 自由という災厄
第十二章 ジリノフスキー現象を読み解く - 一九九三年十二月 -
<II>道化と超能力者のデモクラシー
(p.577−p.581)

コンスタンチン・ボロボイ氏は、応用数学者から実業家へと転身し、ペレストロイカ以降のソ連/ロシア社会で大成功を収め、億万長者となった人物です。彼は93年の選挙で「経済自由党」を率いて戦いましたが「ジリノフスキー」現象の前に惨敗を喫しました。

その彼に著者はインタビューを行いました。

・今のロシアは1930年代のワイマールドイツと似ており、ファシズムの綱領を掲げる政党が勝利してしまった。今後のロシア政局について考えられる限りのシナリオを分析してみたが、希望の持てるヴァリアントは1つもない。

・みんな、ジリノフスキーの危険性を本当にわかっていない。ジリノフスキーはピエロだがバカではなくずる賢く、非常に頭が良いといっていい。彼は今回の選挙で”超能力者”によるマインドコントロールを試み、成功した。この危険性を誰も真剣に考えようとしない。大問題だというのに!

・「超能力」の正体は催眠術だ。大衆を催眠術でコントロールするなんてファシズムのやり方だ。そんなことは道義的に絶対許されない。

 

93年ごろのロシアでは、オカルト、超能力ブームが爆発的に拡大し、魔術師、UFO、カルト宗教の導師(オウム真理教の麻原彰晃も含む)がテレビ出演、宣伝するケースが多かったようです。そして、当時最も人気を集めていたのはカシピロフスキー氏でした。

カシピロフスキーは、テレビを通じて不特定多数の視聴者に「超能力エネルギー」を送り、病気治療を行うことをセールスポイントとしておりました。その彼が、放送最後に「ジリノフスキー支持」を呼びかけていたというのです。

 

今の日本では放送コードでこのようなオカルト関連を肯定的に紹介する内容は禁じられていますが、怪しげな宗教家が政治家とつるんで勢力を拡大する、という手法は今の日本でも行われています。

上記の詳細については次回ご紹介します。”超能力者”によるマインドコントロールという内容は突拍子もないものですが、次回紹介の内容を踏まえるとかなり恐ろしい内容です。

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