第四部 自由という災厄
第十二章 ジリノフスキー現象を読み解く - 一九九三年十二月 -
<I>ファシズムという名の「希望」
◆ボルトラーニン再び ー熊の鼻をつつくな!!
(p.544−p.554)
改革派の一員でもあり、1年前に取材をした時はハズブラートフ最高会議議長と対立が先鋭化した時でした。今回は10月モスクワ騒乱事件でエリツィン側が勝利しましたが、その後の総選挙で敗北を喫し、ジリノフスキーの台頭を許してしまいました。
エリツィン政権のスポークスマンとして、この結果について総括してもらいました。
・選挙の結果についてはロシアは新しい憲法、すなわち強い権力に賛意を表したので与党「ロシアの選択」は勝利したと言える。しかし、数百万人がジリノフスキーに投票したのは、ジリノフスキーを強い人間と見たためである。今日の政府では人権を擁護する力さえない無力な政権だと評価を下したのである。ジリノフスキーの出現とは、彼を通じてロシア国民の不満が明らかになったことである。
・ジリノフスキーは国民を愚弄している、とロシアマスコミは分析しているが、それは違う。ロシア国民の投票者は、これ以上国民を虐げてはダメだ、権力機関や治安機関の仕事が非効率的だ、ロシアの伝統を放棄させる侮辱は許さないという抗議行動をジリノフスキーへの投票という形で示したのだ。
・ロシア人の性格は熊と同じで、触ったり毛を引っ張る程度ではうなるだけだが、鼻を棒でつつくと立ち上がって攻撃し始める。ロシアは今、そういう微妙な時期で、熊をからかうにも限度があるのである。この原因は現政権の政策の曖昧さと一貫性のなさによって経済が悪化し、スタグフレーションを起こしていることだ。ロシアに必要なのは、日本の明治維新と2次大戦後の復興の過程で示された独自の伝統を犠牲にしない方法論であることが示された。
・民主派の分裂、特にヤブリンスキーは選挙前での事前話し合いで、彼が政府を批判することで共産党に流れそうな票を彼の陣営に引き入れることで合意していた計算づくの行動である。
・急進的改革は手術で切開した状態でありその時期は過ぎ去った。いま必要なのは傷を縫合する作業、つまり大統領が強力な経済政策を進められるかどうかということであり、いままで通りの政策のままだと大統領、政府、議会は事態を掌握できなくなるだろう。
・ジリノフスキーの台頭は現象である。これはロシアにファシズムが生まれる土壌があることと、社会のこの現象に対し無関心であることである。またジリノフスキーの背後には権力を握る野心を抱いている軍部(レベジ中将、グロモフ大将)がいる。彼らはジリノフスキーを操り人形のように使って暴れさせ、その後に登場しようという策略を持っている。
ボルトラーニン氏はマスメディアを担当しているだけあって、選挙前にジリノフスキー氏が躍進するという予測や、情勢分析や投票に関する国民の行動分析などをはじめ冷静に分析していることがよくわかりました。また、分派行動も計算づくで行っていたというこの証言は、昨日のヤブリンスキー氏とのインタビュー紹介と矛盾せず、むしろその裏づけとなっていました。
そして、ジリノフスキーは実は軍部の操り人形であるという分析にも驚きました。
混乱期の脱却には、歴史上での日本の対処の仕方が有効だということですが、これは結局のところ自分に可能なことを取捨選択して行うということと考えています。つまり、人々が混乱期を乗り切るには、いままでの人生経験で継続して取り組んできたことや経験してきたことを活用するのがてっとり早いということです。
いまのうちから自分に合うスキルや資格などを身につけたり、訓練をするのが大事と感じています。
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