第三部 権力のはらわた
第十一章 不和の林檎は投げられた - 一九九二年十二月 -
◆首相自らが武器密輸に関与
(p.518−p.525)
先日は第二レベルまでの武器密売についてご紹介しましたが、本日は第一レベル、つまり政府首脳レベルの武器密売についてご紹介します。
オスタンキノ・テレビの人気報道番組「ポリトビューロー」でブルブリス、ガイダルが兵器の密売に関与!?というもので、メディアの独自取材で書類を入手、分析してその疑惑を突き止めたのでした。
(概要)
・92年3月にブルブリスはリトアニア政府とロシア政府間で「鉱山廃棄物リサイクル技術」の協力関係を結ぶことに同意し、26日付で交渉、協定の調印をガイダルに「命令」した。ガイダルはそれを受けて4月21日付でこの事業の全責任者としてニコライチュクなる人物を任命した。・ニコライチュクはロシア政府、CIS軍と、リトアニア政府との委託を受けた「リトヴェルスラス」社と間の兵器売却の秘密取引に関与し、交渉実務を取り仕切っていることが判明した。
・自動小銃3万丁、機関銃2千丁、攻撃機Su−25が20機、戦闘機MiG−29が20機、迎撃機Su−27が20機など合計13品目、総額17億ドルの巨大な取引が国民に秘密にされ、売却益の充当先が不明となっている。
・リトアニアの国防装備に当てられる、ということになっているが情報ではリトアニアは経由地にすぎず、サウジアラビアに密輸されることになっていた。したがって「鉱山廃棄物リサイクル技術」協定は密輸を覆い隠すためのダミーである疑惑が強い。
・ブルブリスは番組に出演する予定であったが直前で出演キャンセルした。
リサイクルに関する協定調印と称して大規模に密輸を図るというのは地位を利用した大胆なやり方で、大変驚きました。
こういう武器密輸が横行する発端となったのは、先日ご紹介したポルトラーニンによるとエリツィン政権は、国防省の圧力を受けて国防省内に商業局の設置と、駐留軍撤退に関する費用捻出のために商業局に武器売却を独自にさせてよいことを認めてしまったからだ、ということでした。
また、戦略核ミサイル基地に「ポリトビューロー」のスタッフが無断で侵入し、ミサイルの動作を勝手に行った様子をテレビ番組で報道し、核施設もずさんな管理であったことが暴露されたため、核兵器も密輸の対象になったことが想像に難くありません。
これと関連して核開発の研究者36人が北朝鮮へ集団出国直前で逮捕されるなど国家が崩壊すると、明日の生活のためなら核でもなんでも外国に売って生き延びるという恐ろしい実態がありありと浮かび上がりました。
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