第二部 青ざめた異族
第六章 ロシアの他者なるチェチェン - 一九九一年十一月 -
◆兄弟民族の苦悩
(p.339−p.342)

ドゥダーエフ大統領とのインタビューでは、カフカス地域では各共和国間で分裂反目しあっている状況であることが語られましたが、イングーシ共和国およびカスカフ地域周辺の状況はどうだったのでしょうか。
イングーシ共和国もまた、兄弟民族であるチェチェンと同様に強制移住によって中央アジアに移住され、その後帰還することができましたが、イングーシ共和国の領地の一部は、北オセチア共和国に併合されたままでした。この領地について北オセチア共和国と対立し、流血の事態に発展していました。

チェチェン共和国と同様にロシアから独立を図ろうという動きもありましたが、もしもイングーシ共和国がロシアからの独立を目指す場合、ロシア連邦内に残留する北オセチア共和国との領土交渉が、ロシアの軍事力が背景にある北オセチア共和国と対峙することになるためイングーシに不利になることを懸念、そのためイングーシ共和国はあくまでロシア連邦内に残留するという方向で進むことになりました。

厄介なことに、オセチアはもともと1つだったのですがスターリンの時代に南北に分断され、北部はロシア共和国に、南部はグルジア共和国にそれぞれ編入されてしまったのです。オセチア人は南北統合した上で独立を欲しておりますが、南部はグルジア共和国から独立を目指して戦いを求め、そのため南北オセチアは親ロシア政策をとることになったのです。

そしてグルジア共和国はロシアからの独立を図りますが、南オセチアのグルジアからの独立要求は断固拒否し、対立するという事態になっていました。

ややこしい状況が続くため、結局カフカス地域の状況は大国ロシアにとって優位な状況が続くことになります。

ソ連という大国が崩壊すると、いままでの秩序も崩壊するため周辺地域での領土や国境線に関する紛争が激発したことが伺えます。現在、アメリカの国力が徐々に衰退しつつあるためアメリカの周辺地域である日本近海での領土紛争が今後激発していくことと思います。その結果、日本でもこの本に書かれた事態がどんどん発生するのではないかと感じた次第です。

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