第二部 青ざめた異族
第六章 ロシアの他者なるチェチェン - 一九九一年十一月 -
◆ドゥダーエフ - 現代の英雄?
(p.328−p.337)
ドゥダーエフ大統領との単独インタビューの続きです。
・横行しているチェチェンマフィアと組織犯罪についてどう戦うつもりなのか?
チェチェン人がマフィアに手を染めているのは事実で、直面している政策課題である。しかし、マフィアに手を染めざるを得ないのは、スターリン時代の強制移住によって生活基盤を全て破壊されてしまったためにロシアの中でも特に貧しい地域であり、まともに大学を出ようとしても、進学を諦めてチェチェン内で働き口を得ようとしても多額の賄賂を要求されてしまうためにまともな職場になかなか就くことができず、その上他地域に出稼ぎに行こうとしてもそこで差別を受けてしまっていた。
いきおい、自らと同胞を守るために武器を取りマフィアとして生きて行く道を取らざるを得ず、犯罪者としての集団となってしまい、構造的な問題であるため、一朝一夕では片付かない。
マフィア根絶には、まず、マフィアが大統領権力を利用できると錯覚させて安心させて邪魔をさせないのち、民主主義による高い支持の下でマフィアを生み出した構造を根本から破壊し、マフィアと戦える新しい治安機関(検事局、KGB、内務省)を創設して対処する。
・チェチェンは独立を求めているが、連邦内にとどまり自治権拡大の選択をしたイングーシ共和国とはどういう関係を保つか?
チェチェンとイングーシには何の問題もないし、イングーシとの領土に関する問題も話し合いで解決することができた。しかし、チェチェンに限らず、カフカス地域の諸民族に対して分裂し反目しあう体制を作ったのはロシアの思惑である。また、カフカス地域には現在互いに対立しあっているが、対立をなくせるようなカフカス地域の共通会議の場を作りたい。そして、我々はロシア人と戦っているのではなく、ロシアの帝国主義と戦っているのであり、断じて奴隷に甘んじるわけではない。
ドゥダーエフ大統領は、かなり高い理想の持ち主であることはよくわかりました。しかし、人は一人だけでは物事を動かすことはできないと感じました。また、混乱した社会で生き残るには賄賂か、そうでないなら武器を取り団結して生き残るしかないという悲しい事実も明らかになりました。
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