あらかじめ裏切られた革命 33 としておりましたが正しくは32です。訂正いたします。

第二部 青ざめた異族
第六章 ロシアの他者なるチェチェン - 一九九一年十一月 -
◆ドゥダーエフ - 現代の英雄?
(p.319−p.328)

著者は、運良くドゥダーエフ大統領との単独インタビューに成功しました。

隣国グルジアのガムサフルディア大統領とは盟友関係に近く、初の民主的選挙で選出されたこと、国民の圧倒的支持を得たこと、急進的な立場を取り、ロシア共和国と対立していることなどいくつか共通点がありましたが、ガムサフルディア大統領は反体制知識人で常に落ち着きがなくイライラしていた様子であった一方、ドゥダーエフ大統領は体制派の軍人で、常に冷静沈着な人物でした。

チェチェン共和国および対立していたロシアとの現状については、次のように分析していました。

まず、チェチェンはロシアからの独立を求めて200年間戦い続けてきたが、その闘争手段として民主主義的手法を採用している。現時点では流血の事態を招かずに強い抵抗の意思を示している。これは国際世論の共感を呼び起こすことと評価している。

しかし、ロシア国民の主権と民主主義を保証するならば、ロシア連邦内の自治共和国についても独立を求めるのは当然の権利であり、平和裡に求めてきたが、デマ宣伝、挑発、テロ、軍事介入という具合にロシア側からことごとく拒絶されてしまっており、これは200年間続いたロシアの圧政と変わらないと痛感した。

さらに、ルツコイ副大統領、ハズブラートフ最高会議議長をはじめとした、ロシア共和国の最高幹部たちが画策して、チェチェン大統領選挙は認めないこと、流血の事態を誘うべく軍事介入に失敗した将校を罰する、武器密輸阻止と称してロシア共和国からの物流を封鎖し、経済制裁をかけるなど、3ヶ月以内にチェチェンの政治状況を不安定にする工作指示した文書に署名していることが明らかとなっている。

ただ、民主主義をもたらすきっかけを作ったゴルバチョフやエリツィンの業績は高く評価しており、とくにエリツィンに対しては、ソ連がバルト三国を武力弾圧を試みた際、ロシア人が巻き込まれないように保護を呼びかけたことと、91年クーデターの際に勇敢に立ち向かったことは特に素晴らしい。

ロシアからの軍事介入については、ロシアから派遣された軍人には罪がなく、兵士たちの「ロシアへ無事に帰りたい」という願いは叶えてやりたいと考えており、住民との流血の事態を避けるためにあらゆる手を尽くす。

という具合に、民主主義で平和裡に闘争を行うこと、派遣された軍人には罪がなくエリツィンは偉大な人物であるが、取り巻きが悪いという具合に、相手のメンツを決定的に潰さないよう慎重な姿勢を崩していませんでした。

 

混乱期は交渉1つで状況が大きく変わります。たとえ自分が不利な立場であったとしても、自分と相手との状況の差を冷静に観察し、相手のメンツを潰さないように配慮したく思います。

なお、単独インタビューはまだ続きます。

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