第二部 青ざめた異族
第六章 ロシアの他者なるチェチェン - 一九九一年十一月 -
◆越境し続けるチェチェン・マフィア
(p.312−p.319)

チェチェン人はマフィアで汚職ばかりというわけではありません。ガダーエフ氏のような汚職を嫌う法務官僚もいました。

ガダーエフ氏によると、ブレジネフ末期以降80年代は、チェチェンやイングーシでは当時、党の汚職官僚は幹部の人事をコントロールし、ポストを賄賂によって売却することが一般的であり、法務官僚も例外ではなく、汚職や横領事件があっても、捜査官が賄賂を受け取って不起訴処分にすることが大変多く、唯一金銭汚職になびかなかったのがKGBだけだったということでした。

さらにチェチェンでの汚職で特徴的なのが、血族との結びつきと絡んでくることです。例えば、公職ポストを得るための賄賂の優先順位は最も高い金を出した人ではなく、同じ血族のものから優先されるということなのです。

ドゥダーエフ大統領は汚職が蔓延った80年代の時点ではアフガンで軍歴を積んでいて、当時チェチェンで蔓延していた汚職とは無関係だったようです。そのため、民衆から汚職を追放できる決断力のあるリーダーとして歓迎されていたようでした。

混乱期は汚職も蔓延しますが、KGBのように汚職になびかない人もごくわずかであるが存在するということも今回初めて知りました。

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