第二部 青ざめた異族
第六章 ロシアの他者なるチェチェン - 一九九一年十一月 -
◆血の復讐こそ民族の掟
(p.285−p.302)

チェチェン人は、血縁関係を大変重視しています。祖先を敬い、7代前の父方の祖先の名前を記憶しているのは当然のこととされています。また、地縁も強固で、男は絶対に自分の家族を養わなければならず、地域で扶養者を失った女性や子供たちがいたら、同じ地域内の男が面倒をみる義務があります。

また、チェチェン人は、身内の男が一人殺されたら敵方の一族の男を一人殺し、身内の女が一人陵辱されたら敵方の男を二人殺さなければいけないという、「仇討ち」制度が存在します。ただし、過ちを犯した自分の罪を心底から悔い、許しを請えば長老たちが仲介人として入り、復讐する側は殺す代わりに髪の毛を一束切ることで落とし前をつけるという制度もあります。

そして、チェチェン人は、チェチェン以外の外国地域で出会うと、苦しい同胞に対して半分のお金を渡して支援するという習慣があり、チェチェン民族は一つの共同体として大変結束力が強く、行動力があるのです。

行動力の高さを証明する実例として、サトゥーエフは単身で、エリツィン大統領が非常事態宣言を出した時に、エリツィンの生まれ故郷と、ゴルバチョフの生まれ故郷との間を飛行する旅客機を乗員乗客には危害を一切加えずにハイジャックし、トルコまで飛行させてチェチェンで発生している真実を国際世論に訴えるという行動をとり、成功させたのです。

まさに日本の「ヤクザ」「任侠道」を彷彿とさせる内容でした。

ハイジャックや仇討ちはともかくとして、少なくとも地域で助け合ったり、外国で苦しい同胞に対して惜しみない支援をする姿は今後の非常災害が発生した時に参考にするべきであると感じました。

 

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