第二部 青ざめた異族
第五章 グルジア 血と蜜の流れる土地 - 一九九一年十月 -
◆銃口と葬列の街
(p.205−p.218)

グルジアの内戦は、政府と反政府勢力との対決のほか、多数派を占めるグルジア人とグルジア国内の少数民族との分離独立運動の2つが重なっていました。

まず反政府勢力との内戦では、反政府側は旧ソ連で最大の汚職事件が発生し、最も強大な勢力であるグルジアマフィアが背後についていました。反政府勢力側の民兵は、政府側の民兵軍よりも武器も資金も豊富で、グルジア闇社会のゴッド・ファーザーであるジャバ・ヨセリアーニは公然とグルジア政府打倒を主張しており、無視できない勢力でした。

また、グルジアは、歴史的に中央アジアの諸民族が入れ替わり立ち代り支配してきたため、以下写真のように様々な民族が混在して居住しており、自治区を形成しています。

カフカス

そのため、連邦中央に対して「民族自決の観点から」グルジア人はロシアから独立を訴えて成功させても、グルジア国内の自治区であるアブハジア自治共和国、南オセチア共和国がグルジアからの分離独立を訴えた時に、今度はグルジア人は鎮圧する側に回るという二律背反の構造となっていました。

どうもグルジア人がソ連から独立する際、1917年のアメリカのウィルソン大統領が唱えた民族自決の理念に基づいて行ったと思われますが、これが成立するのはごく一部の地域に限られており、グルジアを始め旧ソ連の各共和国ように多民族が混在している地域の場合は結果として紛争を招く構造となってしまっているように感じました。

日本においてはどうなるかはわかりませんが、歴史的な違いを背景に分離独立運動が起こる可能性はゼロとは言えないと考えられます。

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