第一部 ロシア零年
第三章 マルクスの国の遺産相続 - 一九九一年十二月〜九二年二月 -
<II>なし崩しに売られる帝国
(p.101−p.104)
モスクワ市内オクチャーブリ地区。ここはレーニン像の建つ十月革命広場のある都心の地区ですが、その再開発に関する契約書類が2通存在しました。
1通目は、ガガーリン広場と隣接地域の再開発に関する、モスクワ市人民代議員ソビエト幹部会と、同市執行委員会による共同決定の書類でした。その内容は、オクチャーブリ地区の再開発に関し、「公共財産管理局」とフランスの開発業者「SVS」社との合弁会社を設立し、住民をたちの退かせるというもので、ポポフ市長、ルシコフ副市長のサインが記されていました。
2通目は、アメリカ資本の開発業者と「公共財産管理局」との間で合弁会社を設立し、シャヴオロフカ通り、オルジョニキーゼ通り、プーシキンスカヤ通り、ガガーリン広場、オクチャーブリ広場を結ぶ五角形のエリアの再開発を行い、住民を強制的に立ち退かせるというものでした。
この契約書の土地を詳細に調べてみると、シャヴオロフカ地域が二重に再開発対象となっていることが判明しました。
一体どういうことなのか。普通に考えて同一の行政組織が契約に関与しているのにもかかわらずこのような重複しているのはなぜなのでしょうか。これが土地を巡る大規模汚職事件の端緒となりました。
住民の預かりしらぬところで一方的に売られ、立ち退きをせまられるというのは大変恐ろしいことだと感じました。
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