第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§5 アメリカと「ドイツ帝国」の衝突
アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵ードイツと日本
(p.60-62)
ー 話をアメリカに戻しましょう。アメリカシステムはグローバルなパワーではあるけれども、ウクライナからは非常に遠くて、したがって「西側システム」によるウクライナの統合・崩壊から利益を引き出すことができませんね。
ズビグネフ・ブレジンスキーによれば、アメリカシステムとは、ユーラシア大陸の二つの大きな産業国家、すなわち日本とドイツをアメリカがコントロールすることだ。ただしそれは、アメリカ自身が産業規模において明確に優越しているという過程の下でのみ機能する。
早くも1928年にアメリカの工業生産高は世界の工業生産高の45%を占めていた。戦後、1945年には、アメリカは相変わらず45%を占めている。ところが、それが今では17.5%にまで落ちたのである。ユーラシア大陸をコントロールしようとするブレジンスキーのシステムは、現在の数値を見ると成り立たない。私が「帝国以後」で述べたように、アメリカのウクライナとの交易は全く取るに足らない。
東ヨーロッパでNATOが安全を確保しているのは、実はドイツの空間なのだ。アメリカ政府向けに、「プロシアの王様のために戦争をする」(骨折り損のくたびれ儲け)という古い表現を今日化してあげるべきであろう。
20世紀半ばのアメリカは世界の工場と云われておりましたが、この表を見ると戦前の時点で世界の工業生産高の半分を占めており、圧倒的な工業大国であったことがわかります。戦前におけるアメリカとドイツ間の工業生産高の比率は44.8:11.6=3.86:1、2011年におけるアメリカとドイツ間の工業生産高の比率は17.5:5.7=3.07:1となっており、世界全体でみた場合の工業生産高の割合は両国とも大きく低下していますが二国間の比率自体は大きく変わっていません。
しかし、アメリカ:「ドイツ帝国」の比率は17.5:14.4=1.21:1という具合にほぼ肩を並べてしまっており、現状ではアメリカはドイツをコントロールできていないという様子がここでもうかがえると思います。