第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§5 アメリカと「ドイツ帝国」の衝突
ウクライナ問題の行方
(p.59-60)
とはいえ、例外的な事件となるこのウクライナの獲得は、まだドイツによって実現されてはいない。ゲームというか、むしろ戦争と呼ぶべきだが、それはまだ始まったばかりだ。
中部ウクライナ人にとって、問題は決着していないと思う。システムは今後、崩壊の度を強めていくだろう。GDPが縮小するだろうし、状況は悪くなっていくだろう。
思うにそれこそが理由で、ロシアはあれほど慎重な態度をとっていて、戦争することにあれほど消極的で、一般に言われているのとは逆に、ウクライナのいくつかの部分を併合することを望んでいない。
ロシアは西側による制裁を恐れていない。しかし、中部ウクライナで憎まれることを望まない。現状ではウクライナの中心部分を成す人々は、ロシアに対して警戒心を持っているが、しかし、ロシア人には空間と時間をうまく活用する大きな歴史的能力があることを認めなくてはいけない。
ドイツ的ヨーロッパによる処遇を2年間受けた後、キエフの人々は何を考えるだろうか。もしかすると彼らはモスクワの方を振り向こうとするかもしれない。崩壊していくシステムは踏みとどまることがない。崩壊し続ける。
西側マスコミ報道ではロシアはウクライナの東部を併合したがっているという内容が流れており、私もウクライナ東部にある軍需工場を考えるとその考え方を支持していました。しかし、ロシアはウクライナのいくつかの部分を併合することを望まない、というトッド氏の見解については意外に感じた次第です。
ですが、このトッド氏の見解については、住民がロシア領への帰属を望んだクリミア半島以外の、ウクライナ語が喋れない人たちが多いウクライナ東部・南部地区に対して下手にロシアが軍を投入して併合しようとすると、当該地域のウクライナ住民がロシアかウクライナかの選択を迫られ、その結果として住民同士でいがみ合いを起こしてしまうためロシアは表立った軍事介入を避けているという、佐藤氏の見解(佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol034–「くにまるジャパン発言録」より:現代ビジネス)を知り、納得した次第です。
何れにしても、昨日の紹介を含め、ウクライナは「ドイツ帝国」の草刈り場となり始めていることが伺えました。