第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§2 ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
アメリカ帝国の凋落
(p.33-p.34)

 今日まで、この危機におけるアメリカの戦略は、ドイツに追随することだった。そうしていれば、アメリカはもはやヨーロッパの状況をコントロールしていない。ということが露見しないからだ。
 こんな体たらくのアメリカ、配下の国々がそれぞれに地域で行う冒険的な行動をもはやコントロールできず、むしろ是認しなければならない立場のこのアメリカは、それ自体として一つの問題となっている。

 イラクにおける地政学的問題の筆頭であったこのアメリカはすでに、サウジアラビアから財政的協力を得ているジハード勢力に対抗するために、年来の戦略的敵国であるイランと協力することを余儀なくされている。サウジアラビアはドイツと同様にアメリカの主要な同盟国という地位にあるのでその裏切りはおおっぴらに確認されるわけにはいかない…。
 
 アジアでは韓国が日本に対する恨みつらみのゆえに、アメリカの戦略的ライバルである中国と裏で共謀しはじめている。いたるところで、つまりヨーロッパにおいてだけではなく世界中で、アメリカのシステムにひびが入り、割れ目ができ、あるいはそれにも増して悪いことが起こっている。
 

 2013年9月、アメリカのオバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」とテレビ演説で明言したことからも示されるように、完全に内向きになっており、日本以外の諸外国はアメリカのいうことを聞かなくなっており、ただただアメリカは傍観しているだけという状況になっています。
 
 この実態については、アメリカと日本以外の西側主要国がこぞって参加した中国主導で結成したAIIB、パク・クンヘ韓国大統領がアメリカの意向を無視し、9月3日に開催された中国の「対日戦戦勝70周年記念軍事パレード」に出席したことからも、一般の日本人もようやく実感として理解できたのではないでしょうか。

 従って、「アメリカの政策はドイツに追随することで、アメリカがヨーロッパをコントロールできてないという事実を隠している」というトッドの見解は正しいといえるのではないでしょうか。

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