第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§2 ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
アメリカ対「ドイツ帝国」
(p.35)

 ヨーロッパにおけるドイツの力とヘゲモニーは従って、一つの動的な展望の中で分析されるに価する。現在生まれつつある世界状況の中で自らを方向づけるためには、探求し、投影し、予見しなくてはならない。
この世界を戦略的現実主義学派、たとえばヘンリー・キッシンジャーの一派がしているように見ることを受け入れなくてはならない。つまり、政治的な価値観の問題を持ち出しことなしに、各国間の諸システム間の純然たる力関係を見るということだ。

そのような観点からじっくり考えるときに確認できるのは、ロシアが未来の問題ではないということだ。また、中国が軍事的パワーという観点から見て、未ださほど大きな存在ではないということだ。グローバル化された我々の経済世界の中で、二つの大きなシステムの真正面対立の出現を予感することができる。すなわち、一つの大陸にも匹敵するアメリカというネイションと、新たに出現してきたドイツ帝国の対立である。

経済的・政治的帝国である後者を人々は今なお慣習的に「ヨーロッパ」と呼んでいるのであるけれども。この二つの大きなシステムの間の潜在的力関係を評価してみるのは興味深いことだ。

 本書でトッド氏の定義する「ドイツ帝国」とは、以下地図で色が塗られている領域(白色以外)の国々となります。英国、フランス、地中海諸国を始め、北欧、東欧諸国にまでまたがっています。詳細については後日に解説いたしますが、ドイツは私が想像する以上に広い領域にわたって影響力を及ぼしていることが伺い知れます。
 つまり、この領域とアメリカとが正面対立しはじめている、とトッド氏が言及していることに留意する必要があります。

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