第2章 ロシアを見くびってはいけない
「プーチン嫌い」が真実を見えなくさせている
(p.86-88)
ープーチンのことを忘れていますね。彼の粗暴なやり方やホモフォビアを…。
ホモフォビアについては、私は専門的知識を持ち合わせません。もっとも、個人的にはフランスが法制化した同性婚に賛成です。二、三週間まえに週刊誌「マリアンん」がフランス人の「政治的セクシュアリティ」についての世論調査を分析してくれと言ってきました。あれには正直随分楽しませてもらった…。
より真面目な話として、たしかにロシアの大統領には、社会民主主義的なところも、自由主義者的なところも皆無です。
1990年に週刊誌「ル・ポワン」に問われて私は言いましたよ。ロシアがいつの日かアングロサクソン風のデモクラシーになるだろうなどということは想像しないほうがいいとね。ロシアの家族構造や国家の構造が、あの国の歴史に刻み込まれている暴力と相俟って、そうした推移を妨げるのです。
しかしながら、「プーチン嫌い」の雰囲気によって、人口学的な指標によって疑いの余地もなく明らかになる本質的な事実が我々の目に隠されてしまいました。それはつまり、ソ連の崩壊から、モダンでダイナミックな一つの偉大な社会が生まれたという事実です。
ロシアはアングロサクソン系の民主主義へと直接移行するのは難しかったことは、「あらかじめ裏切られた革命」の書評でもご紹介した通りですので、トッド氏のこの指摘についてはなんら違和感はありませんでした。
また、ロシアの大学生は女性:男性=130:100と女性の方が高い比率、いいかえるとロシアでは女性の社会的地位が高い社会となっています。さらに、ロシアの大学進学率自体も2012年時点で世界第10位の69.0%とOECD平均(58.3%)に比べて高いことから教育にかなり力を入れていることが伺えます。
そして、死亡率や男性の平均余命もプーチン政権下に入ってから改善されています。
これらの数値をみるとトッド氏の指摘通りロシアは復活し始めた、と言わざるを得ません。