第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§4 アメリカとEUの産業上の不均衡
ドイツ一人勝ちのシステム
(p.56-57)
ー実質国内総生産(GDP)から見てもドイツの「一人勝ち」で、ほかのヨーロッパ諸国はついていけていませんね
これらの図表を見ると、2005年以降ドイツを震央としてヨーロッパが容赦なく序列化されてきているのが分かるでしょう。いいかえると、ドイツとの関係におけるほかのヨーロッパ諸国の脱落だ。フランスやイギリスのような大国も含めてね。
これら全ての曲線が推移の速さを示していて、しかもこの推移は始まったばかりだ。おそらくドイツの民衆の一部分は給与の低さに苦しんでいるだろうけれど、全体としてみると一人当たりGDPでも、結局常にドイツが抜きん出ている。
この推移の行き着く先は、ヨーロッパ大陸のドイツ以外の国々の産業システムが壊滅して、ドイツだけが得をするというシステムだ。
注目すべきはまた、ドイツのコントロール下にあるこのヨーロッパ大陸との関係で、人口上、アメリカは単独では対抗できる規模にないという事実だ…。
第1章の章末に掲載されているグラフのうち、トッド氏の主張を端的に表しているのが図表14と図表17でしたのでこれを抜粋しました。
ドイツを基準とした時、他のEU諸国は2006年以降、軒並み低下していることが伺えております。さらに昨日の紹介で示しましたように、アメリカよりも「ドイツ帝国」の領域の方が労働者数が2.5倍多い上に賃金が安いためこの調子で進めばトッド氏の指摘通り完全にドイツは一人勝ちとなってしまう可能性があります。
このドイツ一人勝ちを防ぐ策として、アメリカは、一連のVW車の排ガス不正事件の暴露や、シリア難民の大量流入を招くことでドイツの国力をそぎ落とす作戦に出た、というのは穿った見方でしょうか。