第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§4 アメリカとEUの産業上の不均衡
不均衡はドイツ支配にプラスに作用
(p.54-55)
ー以上(図5ー7)のグラフによって、アメリカ合衆国とこの新たなドイツ帝国の相対的な力を比べることができますね
思うに、一番興味深い図表は産業労働人口を示している図表7だ。アメリカに対してEUを優位に立たせる産業上の不均衡が著しい。ヨーロッパに今尚発展が低レベルにとどまっている産業セクターがあることは、ネガティブなことではない。それどころか、むしろポジティブだ。ヨーロッパの産業領域を見ると、低賃金のゾーンに大きな発展の余地が存在する。
多分この不均衡を利すれば、ドイツはアメリカの産業領域を死に追いやることができるだろう。現段階で菅大西洋貿易投資協定(TTIP)を望んでいるのはドイツである。
図表5では、ドイツのGDPは1990年に東西ドイツが統一されてから伸び率が低下していますが、それでも30000ユーロ台と高いです。しかし、ドイツ以外の国の平均GDPは22500ユーロとドイツに比べて低いです。さらに図表6では、ドイツ/EUの産業雇用%がアメリカよりも高く、図表7では産業雇用者数がEU諸国の方はアメリカの2.5倍多いことが示されていることから、これらを総合すると、ドイツ以外のEU諸国には低賃金で働く労働者が多いことがわかります。
アメリカと「ドイツ帝国」とが仮に完全に自由貿易となった場合、低賃金で働く労働者が圧倒的に多い「ドイツ帝国」側が優位に立てるのは想像に難くありません。