第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§3 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
ヨーロッパという階層システム
(p.52-53)

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 しかし、もう一度言っておきたい。この地図は最終的な地図ではない。この地図の目的は、ヨーロッパの現実に即したとっかかりのイメージをざっとおもいうかべ、今日のヨーロッパが不平等な諸国家のシステムになりつつあるという現実を覆い隠すニュートラルな地図のイデオロギーから脱却することにある。不平等な諸国家のシステムは一つの階層秩序であって、その中には、苛酷な支配を受けている国々、攻撃的な国々、支配的な一つの国、そしてヨーロッパ大陸の恥そのものである一つの国、すなわちわれわれの国、フランスが含まれている。

ートルコの問題に言及しないのですね。 

 トルコのことを話さなかったのは、それがここでのテーマではないからだ。EU諸国民はトルコの加入を望んでいない。しかしそれよりもはるかに重要なこと、それはトルコ人がもはやEUを欲していないということだ。今後誰がいったい。諸国民を閉じ込めるこんな監獄に入りたがるものか。

 現在のEUはドイツが主導権を握っていますが、ドイツの家族型は直系家族で、権威を重んじ、人々には違いがあって当然で平等ではない体制に慣れています。
繰り返しになりますが、トッド氏は家族型が雛形となって社会体制を規定するということを見出しておりますので、ドイツが支配する社会は階層を持つ秩序を形成することは当然のこととして指摘しているのです。

 また、トルコはEU加盟について2005年の時点で申請しましたが、2006年時点でさえヨーロッパでの世論調査で加盟反対が優勢でした(出典1)。また、2013年でのトルコでの調査でもトルコ国民はEU加盟反対派の方が多かったことが示されております(出典2)。

 ドイツでは第二次大戦後、労働力不足解消と称してトルコ人が底辺労働者として大量流入、処遇に問題を抱えていることも知られていますので、仮にEUへトルコが入ったとしても序列は最下層となるのにはかつて大帝国を築きあげた誇り高いトルコ人としても我慢できないのではないでしょうか。

 なお、トッド氏はドイツに自主的に隷属している自国のフランスの現状を「ヨーロッパ大陸の恥そのもの」と恥じており、今のEUに対しては大変批判的です。その理由については5章から8章にかけて具体的に述べています。

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