第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§3 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
ガスパイプライン問題ー争点は「ロシアvsウクライナ」でなく「ドイツvs南欧」
(p.51-52)

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-では、エネルギー問題のレベルではいかがですか?

 この地図(上記参照)に主要なガスパイプラインが示されているのは、一つの神話を覆すためだ。ガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設によって、ロシアがエネルギー関係をウクライナによって支配されるのから逃れようとしているという神話があるね。
 存在するガスパイプラインのすべてのルートを見て欲しい。ウクライナを通っていることだけが共通点ではないよね。ドイツに通じているということも共通点だ。従って、ロシアにとての本当の問題は実は、ウクライナだけではなく、ガスパイプラインの到着点がドイツにコントロールされているということなのだ。そしてそれは同時に、南ヨーロッパの問題でもある。

 ヨーロッパがロシアのクマとだけの間に問題を抱えている一つの平等なシステムであるかのように素朴に捉えるのをやめるならば、ガスパイプライン「サウス・ストリーム」が建設されないことがドイツの利益でもあるということがわかる。それが建設されると、ドイツが支配しているヨーロッパの大部分のエネルギー供給が、ドイツのコントロールから外れてしまうだろう。
 「サウス・ストリーム」の戦略的な争点は従って、単に東と西の間の、ウクライナとロシアの間の争点ではない。それはドイツと、ドイツに支配されている南ヨーロッパの間の争点でもある。

 ロシアから西ヨーロッパへ供給されるガスパイプラインは、「終着点がドイツである」という事実をトッド氏の指摘で私ははじめて知りました。フランス在住のトッド氏ならではの視点であり、大半の日本人にとってはこの事実は完全な盲点だと思います。

 戦前の日本も石油をアメリカから禁輸されてしまい、アメリカの言いなりになるか戦争するかの選択を迫られました。それを考えると現在ほぼ一つしかない蛇口の元栓をドイツが抑えてしまえば、あとの国々はドイツのいうことを聞くか、EUが分裂するまで対立するかの2つの選択を最終的には迫られるのではないでしょうか。

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