第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§3 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
イギリスに近いデンマーク、ロシアに近いフィンランド
(p.46-47)
私はフィンランドとデンマークをこのカテゴリーに入れなかった。
スウェーデンとは逆に、デンマークは気質において真性のリベラルだ。デンマークが持つイギリスとの絆は、人口の大半が典型的なスカンジナビア風バイリンガルという事実を超えている。デンマークは西の方に目を向けており、ロシアのことをさほど気に病んでいない。
フィンランドはというと、ソ連とともに生きることを学んだ国であり、ロシア人と理解し合う可能性を何としても疑おうとするような理由をもっていない。
確かにフィンランドはロシアと戦争状態にあったことがある。1809年から1917年の間、ロシア皇帝の帝国に所属したが、それは一つの大公国という形であって、そのおかげで事実としてはスウェーデンの支配から逃れていることができたのである。フィンランド人にとって、自分たちの国を植民地化し兼ねない強国は実はスウェーデンなのだ。だから彼らが本当にスウェーデンのリーダーシップのもとに戻りたいと思っているのかどうかを私は疑う。
地図の上では、フィンランドとデンマークは南欧諸国と同様に支配されていることになる。馬鹿げていると思うかい? フィンランド経済はすでにロシアに対するヨーロッパの攻撃性の代償を支払っている。また、デンマークはイギリスが離脱していくことで困難な状況に置かれるだろう。
地図の上ではフィンランド、デンマークは「ドイツ嫌いの衛星国」ではなく「被支配」ということにはなっています。まず、フィンランドの場合、家族型が実はロシアと同じ外婚性共同体家族のため、ロシアと価値観が合うのではないかと考えられます。一方、スウェーデンはドイツと同じ直系家族の家族型でフィンランドとは異なります。そのためフィンランドはスウェーデンの下には入りたくないのでは?というトッド氏の指摘は家族型の違いに起因するのではないかと読み取れる次第です。
また、デンマークの場合、家族型はイギリスのイングランド、ウェールズ地方と同じで、何よりも自由を尊ぶという絶対核家族型となっています。従って本文中に記載されている「真性のリベラル」「イギリスとの絆」というのは家族型が共通しているためということを踏まえて読む必要があります。