第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§2 ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
ロシア崩壊こそアメリカにとっての脅威
(p.36)

 
 ウクライナ危機がどのように決着するかはわかっていない。しかし、ウクライナ危機以降に身を置いてみる努力が必要だ。最も興味深いのは「西側」の勝利が生み出すものを想像してみることである。そうすると、我々は驚くべき事態に立ち至る。
 もしロシアが崩れたら、あるいは譲歩をしただけでも、ウクライナまで広がるドイツシステムとアメリカとの間の産業の上での力の不均衡が拡大して、おそらく西洋世界の重心の大きな変更に、そしてアメリカシステムの崩壊に行き着くだろう。アメリカが最も恐れなければいけないのは今日、ロシアの崩壊なのである。

 ところが今日の状況の特徴の一つは、当事者たちがしかるべき能力を欠き、自らの行動について著しく自覚不足だということなのだ。私はここでオバマのことだけを言っているのではない。彼はヨーロッパのことが何もわかっていない。ハワイ生まれで、インドネシアで育った人物だし、彼の目に存在しているのは太平洋圏だけだ。

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 昨日も紹介しましたこの地図をご覧になった上でトッド氏の言及について考えてみましょう。ここでロシアが万一崩壊したら、アメリカは現在ドイツをコントロールできていない以上、ドイツが完全に一人勝ち状態となってしまいますのでドイツを止められる勢力はどこにも見当たらなくなってしまいます。トッド氏はそのことを恐れているのです。
 また、トッド氏はオバマ大統領のことを太平洋圏だけしか見えていないと批判していますが、アメリカにおける貿易相手国の推移(Where and What Is U.S. Trading Internationally? :The Wall Street Journal blog)をみるとどうしてももはや中国や日本といった太平洋圏の方がヨーロッパよりも貿易取扱量が多いという事実を踏まえても、太平洋圏を重視せざるをえないのではないかと思います。

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