第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§2 ウクライナ問題の原因はロシアではなくドイツ
アメリカによるヨーロッパ制御の鍵はドイツ
(p.29-p.31)
ーところで、先ほどの否認の二つ目の国は?

 それはアメリカだ。
 アメリカによる否認が表現されたのは、ドイツの擡頭の最初の段階、すなわち2003年のイラク戦争の時、シュレーダー、シラク、プーチンが連携した時だ。アメリカの戦略家のうちには、次のようにいう者がいたよ。「フランスを罰し、ドイツ(がしたことを)を忘れ、ロシアは勘弁してやるべきだ」と。

 なぜそうなるのか? なぜなら1945年の勝利の遺産、アメリカによるヨーロッパ制御の鍵、それはドイツをコントロールすることだからだ。2003年からのドイツの擡頭を確認すること、それはアメリカ帝国の崩壊のはじめを確認することだった。

 そこでもって不快な現実を直視しないダチョウ戦略が表に出てきて、石灰化して固着化し、今日アメリカ人の目を覆って、ドイツの擡頭について正しい見方をすることを妨げているように思える。彼らにとってドイツの擡頭は新しい脅威であって、私に言わせればアメリカという帝国の保全にとって所詮帝国の外にいるロシアよりも最終的にはるかに危険なのだ。 

ドイツの擡頭が新しい脅威であることはアメリカが見落としているようで、アメリカはドイツよりもロシアを脅威と感じているようであると、トッド氏は危機を感じているようです。

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