第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§1 自ら進んでドイツに隷属するようになったフランス
ヨーロッパの支配権を手にしたドイツ
(p.26-p.28)

 最初のうち、クリミア奪取のとき私が感じ取ったのはロシアの国力回復だった。ロシアが、他国が無礼な扱いをする事をもはや許すまいとする国に様々な事を自ら決定する力の有る国に戻ったということだった。
 今では、ロシアが基本的に安定化ーもっぱら安定化ーの家庭に有る国である事を確認する。たとえ人々があの国の事を大きな怖いオオカミだと吹聴するとしても。

 擡頭して来た正真正銘の強国、それはロシアである前にドイツだ。ドイツが擡頭してきたプロセスは驚異的だ。東西再統一の頃の経済的困難を克服し、そしてここ5年間でヨーロッパ大陸のコントロール権を握った。
 こうした推移の全体を解釈しなおすべきである。金融危機のときに証明されたのはドイツの堅固さだけではない。あれでもってドイツには債務危機を利用してヨーロッパ大陸全体を牛耳る能力があることも明らかになった。

(中略)

 現在進行中の歴史的シークエンスをずばりと、そして殆どこどものような目で直視すれば、要するに、王様は裸だということを見て取るならば、次の事を確認するに違いない。

  1、ここ5年の間に、ドイツが経済的な、また政治的な面でヨーロッパ大陸の
    コントロール権を握った。
  2、その5年を経た今、ヨーロッパはすでにロシアと潜在的戦争状態に入っている。

 この単純な現象が二重の否認、つまり現実を現実として認めない態度によって見えにくくなっている。これから述べる二つの国のあり方がかんぬきのような機能を果たして障害物となり、実際に何が起こっているのかを人々が理解しないのである。

 ドイツがリーマンショック以降で経済的、政治的に伸張し、ヨーロッパ大陸の支配権を握っているというトッド氏の指摘は、本2015年7月のギリシャ債務危機の際に、IMFでさえもギリシャの債務を減免すべきであると主張しているにもかかわらず、EU、特にギリシャに対して最大の債権国であるドイツが強硬に緊縮財政を主張し、対立したという事例からも明らかに正しいことが裏付けられています。
(参考:IMF、ギリシャ支援を巡りEUとなお対立、債務減免を主張:日本経済新聞

この大国となったドイツは、今や潜在的にロシアと対立しているという指摘についても正しそうに思えますが、詳細は後ほどの章で紹介させていただきます。

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