第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§1 自ら進んでドイツに隷属するようになったフランス
アメリカと衝突しはじめたドイツ
(p.24-p.26)

ドイツから来る信号をキャッチしてみると、それは様々で、互いに矛盾している。ときにはドイツは平和主義的で、ひかえめで、協調路線をとっているように感じられる。ときには、それとは真逆に、先頭に立ってロシアに対する異議申立と対決姿勢を引っ張っているようにみえる。

この強硬路線が日日力を増している。かつてドイツ外相のシュタインマイアーはキエフを訪れる際、フランス外相ファビウスやポーランド外相シコルスキーと一緒に行ったものだ。ところがメルケルは今や単独で、新たな保護領といえるウクライナを訪問する。

ドイツが突出して来たのはこの対立においてだけではない。ここ六ヶ月間、最近の数週間を含めてのことだが、ウクライナの平原でロシアを相手に既に潜在的紛争状態に入っているというのに、メルケルはヨーロッパ委員会の委員長に元ルクセンブルグ首相のジャン=クロード・ユンケルを据えた。ちょっと信じ難い無作法を持って強い反対の意思をあきらかにしていたキャメロンのイギリスを屈辱的な目に遭わせたのだ。

さらに途方も無いことに、アメリカによるスパイ行為の問題を使って、アメリカにもぶつかり始めた。冷戦時代以来のアメリカとドイツの諜報活動の複雑な絡み合いを知っている者にとっては全く信じ難い。

第一、今日明らかな事として、ドイツの連邦情報局は極普通の事としてアメリカの政治をスパイしているね。顰蹙を買うのを承知であえていうけれど、東方でのドイツの政治行動に曖昧な所が有る以上、ドイツの政治責任者らをCIAがモニタリングすることには私は大賛成だ、フランスの諜報局も、ちゃんと任務を果たし、国際的な面でますます積極的かつ冒険的になって来ているドイツの監視に参加して欲しい。

ともあれ、ドイツが反米的にアグレッシブな態度をとるのは新しい現象だ。しっかり考慮しないといけない。ドイツのやり方にはすごみがある。ドイツの政治家達がアメリカ人について語るのを近くで聞いたことがあるが、その様子には深い侮蔑があらわれていた。ライン川の向こう側にはかなりの厚みをもった反米感情の蓄積がある。
(後略)

日本に居ると、ドイツとアメリカは欧米諸国としてひとくくりにされ、友好国だというイメージに立っていると思いますが、実際のところはドイツは勢力の強化に伴い、ロシアやアメリカに対して対外的に強硬路線で進み始めていることについては驚かされた次第です。

特にドイツがアメリカ議会に対して諜報活動を開始したり、ドイツの政治家達がアメリカ人に対して侮蔑的な態度をとるなど、アメリカに対してアグレッシブになっているというのは初めて聞きました。

一方、当のドイツ人達はというと、「ドイツ政治家はアメリカ傀儡」ドイツ人ジャーナリスト達はアメリカ支持記事を書くよう強いられている(日本語訳)(英語原文) の記事にあるように、ドイツの政治家達はアメリカの言いなりになって、親アメリカ、反ロシアの記事を書くように強制されていると告発しており、ドイツ人としてはトッド氏の見方とは異なり、「アメリカのせいだ」「ドイツはバナナ共和国だ」(※バナナ共和国:外国勢力によるワイロ漬けによって現地指導者達が自己の利益しか考えない傀儡となっている状態)と感じており、あくまでも自分たちは被害者であると考えているようです。

私としては他人からは脅威と映り、自身では被害者と考えるこのドイツの状況がどうして起きているのかが疑問に感じた次第です。

Follow me!