第1章 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
§1 自ら進んでドイツに隷属するようになったフランス
ロシア脅威論は西洋が病んでいる証
(p.20-p.22)

ー今日、ロシアはソ連のレベルの覇権をもはや持っていず、またロシアはソ連よりもはるかに民主主義的であるにも関わらず、当時のソ連よりもずっと悪く扱われています。非難がすぐに収まった1968年のチェコスロバキアへの軍事介入と、今でも非難が続く2014年のクリミア住民の投票に基づくロシアへの併合。どうして扱い方に大きな差があるのでしょうか。

その問いへの答えのカギはロシアには無いね。西洋の側に有る。西洋はたしかに世界で圧倒的に支配的だが、それと裏腹に今日、その様々な部分において不安にかられ、煩悶し、病んでいる。財政危機、所得の低迷ないし低下、経済格差の拡大、将来展望の不在、そして大陸ヨーロッパにおいては少子化などいろいろな問題がある。

イデオロギーの側面からみると、ロシア脅威論はますますスケープゴート探しのように、もっといえば、西側で最小限の一体感を保つため院に必要な的のでっちあげのようにみえる。EUはもともと、ソ連に対抗して生まれた。ロシアというライバル無しではすまされないのだ

もっとも、ロシアが西洋世界に対して二、三、「価値」の問題を投げかけていることは事実だ。しかし、「ル・モンド」紙が繰り出す反プーチンでロシアぎらいの愚言が示唆するところとは逆に、西洋の抱えている問題は、いくつかのロシア的価値観のポジティブで有益な性格によって示されている。

ロシアは、「自由主義万能」の道を走る西洋諸国に追従しなかった国だ、あの国では、国家には国家なりの役割があることが再確認されている。婦負署ンというものについてのある種の観念も同様だ。

ロシアは立ち直り始めている国なのであって、出生率の上昇や乳児死亡率の低下もそれは表れている。失業率も低い水準に有る。

 

「あらかじめ裏切られた革命」で紹介した、ソ連崩壊直後のロシアの状況、すなわち1993年の時点で、ロシアにおいては西側民主主義のシステムをそのまま採用するのはロシアの国民性と長年の社会の積み重ねから不可能で、ロシア独自の、地に足のついた方法で国力を回復させ、立ち直らせるしかないという状況でした。

私にとってロシアが西洋とは異なる価値観を持つことについては違和感はなく、むしろどうして西洋が非難しているのが謎でしかなかったのですが、トッド氏の示す解説で腑に落ちた次第です。

トッドによるロシアの状況の詳細は、第2章で記載されていますので、そこで紹介させていただきたく思います。

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