第5章 オランドよ、さらば! -銀行に支配されるフランス国家
オランドの三つの失敗
(p.129-130)

 -6ヶ月前にお目にかかった時、あなたはまた、5年間の大統領任期の果てにフランソワ・オランドは脱皮して一種ルーズベルト的な巨人になるかもしれないという仮説を口にしておられた。今日、オランドが当選した日からほとんどぴったり1年になるのですが、彼はすでにもう失敗してしまったと見なしますか?

 私でなくても、それは分かるよね。オランドにはチャンスがあった。もしかしたら二度目のチャンスがあるだろう。「セカンドチャンス」というアメリカ的概念が私はかなり好きでね。一回目のチャンス、これはもう決着した。何を確認して私がこの明白な事実を受け入れるに至ったかを言おう。
 まず、税率75%を強行することができなかった。フランス共和国大統領には国民投票という武器があるのに、彼は勝負に出なかった。
 二つ目、労働市場改革でオランドはサルコジよりも右に行ってしまった。
 三つ目、銀行システムの改革が骨抜きにされた。うわべを繕う変更がいくつか進行中だが、大掴みに言って実際上、フランスにおいて国家は相変わらず、4大銀行グループの投機の後ろ盾にとどまるだろう。

 このインタビューは、2013年5月に行われたものです。それを踏まえて論評していきたいと思います。
 本文中での「税率75%」というのは、100万ユーロ以上/年の所得を持つ超富裕層に対して所得税を75%にするという、オランド大統領の公約の1つで、大統領当選に大きく貢献しました。これは、元々は「個人」に対して課税するはずだったのですが、フランス最高裁が違憲判決を下したために、企業に対しての課税になったようです。このことに対してトッド氏は「フランス最高裁が違憲と言っているのなら、それに対抗して国民投票を実施して民意を示すべきだった」と主張しているわけです。なお、この政策に関しては本2015年1月に取りやめる決定を下しました(フランス政府、実施2年で「富裕税75%」を廃止へ:東亜日報日本語版)。

 また、サルコジよりも右に行ってしまったというフランスの労働市場改革については、2013年6月に「雇用安定化法」が施行し、その中で従業員の解雇規制が厳しいフランスにおいて集団解雇手続きを緩和するということを行ったことを指すと考えられます。

 特に税率75%の富裕税の実施失敗は、国民の期待を大きく裏切ったと思わざるを得ません。フランソワ・オランド大統領は、歴代フランス大統領の中でも最低の支持率を記録したのはどうしてかと思いましたがこれで納得がいきました。

 なお、銀行システム改革の骨抜きについては追ってご紹介していきます。

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