第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
アメリカなしにヨーロッパは安定しない
(p.121-123)

 -「帝国以後」の頃に比べ、ご見解の中で、アメリカに対する批判の度合いがずいぶん減っていますね。あなたは自分の事を「左翼の親米派」ということさえある…。

 たしかに「帝国以後」はやや拙速にアンチ・アメリカの定番本のようにみなされましたが、当時私は、あの本の中でも、またあの本のプロモーションのために応じたインタビューの中でも、けっして好き嫌いの感情で書いた本ではないと口をすっぱくして言ったのですよ。
 実のところ私は、ブレジンスキー氏の「地政学で世界を読む」の逆を突いたのです。ブレジンスキー氏は知的に優れているので、私としては尊敬せざるを得ない人物ですけれども、彼の夢は私の夢からはかなりかけ離れています。私の姿勢は結局、左翼民主主義者の姿勢であり、「帝国以後」も、北米ではそのようなポジションのものとして理解されたのですよ。
 実際私は、ヨーロッパにおけるアメリカの優位は、政治体制としてのデモクラシーがそうであるように、さまざまな解決策の中で最もマシなものだと考えています。われわれの大陸がどれほどまでのイデオロギー的崩壊の中にあるかを思えば、致し方なしというところです。
 仮にもしカウンター・パワーの原則、合衆国建国の父たちが格別に大切に思っていたあの原則が尊重されることがあるならば、そのときには私はアメリカの優位性を、不安を覚えることすら無に受け入れることができると思います。ロシアは一種のガードレールとして、救いようの無い役割を果たしうるでしょう。あの国の現行の国内システムは全然私の趣味じゃないですけれども、それとこれとは別の話です。国際関係全体の安定性にとって有益なバランスがそれで保たれるだけでなく、アメリカにとっても利益です。人であれ国であれ、自分が全能だと思い込むのは健全なことではありません。
 「仏独カップル」の挫折の後、一抹のアイロニーをこめていうのですが、私は「米露カップル」がうまくいくかどうか試してみていいと思います。
 この発言はどのような意味においてもアメリカモデルに対する「信仰」告白ではありません。単に、将来構想もアイデンティティも持ち合わせない今日のヨーロッパに対する不可逆的な喪の気持ちに突き動かされて、こう考えるのです。

 「帝国以後」では、トッド氏はアメリカがスーパーパワーの座から没落して地域大国となり、フランスとドイツがカップルを組むことになるであろうことを主張しました。その後、本書においてはトッド氏の意向(おそらくフランスとドイツとが対等な関係)と反し、ドイツがヨーロッパの中で誰も押さえ込めないほどの強国となってしまったために、ドイツを抑えるにはアメリカとロシアが組む、特にロシアの役割が休養であると考えたのだろうと思います。

Follow me!