第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
真のプレーヤーは米・露・独のみ
(p.118-119)

 ーこれらの分析の中でフランスは完全にリングの外のようですね。

 私の考えでは、フランスはウクライナ危機に過度に関与すべきでないと思います。自国の歴史と地理から見て、フランスはもともとウクライナから遠いのです。
 フランスが具体的に果たすことのできる唯一の役割はドイツ政府の右腕となることでしょうが、「カール大帝路線」は、ドイツ外交の新たな方向性が持っている不安定化への潜在力を増大させてしまうだけです。
 自立的なフランスのパワーという考えはここでは意味をなしません。ウクライナでの、そしてより広くいえばヨーロッパでのせめぎ合いの中で、現実に重みを持っているネイションは三つだけです。そのうち二つは再び勃興してきたネイション、ドイツとロシアです。もう一つは70年前から支配的なネイション、すなわちアメリカです。

 ギリシャ債務問題、シリア難民問題、ウクライナの和平問題を鑑みるに、トッド氏の言う通り、フランスは完全に蚊帳の外となっており、重要な決定はほぼドイツによって判断されている状況です。
 これらについてフランスが何も出来ず、ドイツを補佐する役割という状況となっている現実を受け入れなければならない、フランス人であるトッド氏の苦悩がそこかしこにうかがえてなりませんでした。

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