第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
アメリカから自立したドイツ
(p.116-117)

 クリミア併合という形でプーチンに乱暴にどやしつけられたアメリカですが、アメリカはもう一つ別の、もっと深い心配を抱えています。ドイツがアメリカの影響圏から完全独立するのではないかという心配です。ブレジンスキーの「地政学で世界を読む-21世紀のユーラシア覇権ゲーム」(山岡洋一訳、日経ビジネス人文庫、2003年)は、現行の外交を理解する上で必須の文献ですが、それを読むと、戦後のアメリカのパワーがユーラシア大陸の二つの最も大きな産業の極、すなわち日本とドイツをコントロールすることで成立してきたということがわかります。
 世界的経済危機を通じてわれわれの目に明らかになったことの一つは、ホワイトハウスがベルリンに対して強制力を発揮することができず、その結果、緊縮経済政策を放棄させる、ユーロの通貨政策を変更させる、そしてより広くいえば世界経済再活性化のための措置に参加させる、といったことに成功しなかったという事実です。
 公言されにくい事実をずばり言いましょう。今日、アメリカはドイツに対するコントロールを失ってしまって、そのことが露見しないようにウクライナでドイツに追随しているのです。

 「アメリカは最早、ドイツをコントロールできていないため、それをごまかすためにウクライナ問題ではドイツに追随していた」という、トッド氏の読みには正直驚きました。
ただ、本2015年10月におけるTPPの大筋合意といい、ウクライナ問題でドイツ、フランス、ウクライナ、ロシアによる和平交渉成立など、どうもアメリカはドイツはコントロールできないので、せめて金のなる木のアジアに近い日本だけはなんとか抑え込んでおきたいという節がうかがえる次第です。

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