第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
アメリカは自分が何をしているかを理解していない
(p.115-116)

 ーあなたはアメリカがウクライナ情勢に対応できていないと見るのですね。どうしてそう言えるのですか?

 アメリカは自らどこへ向かっているのかがわかっていません。ヨーロッパで発生した危機を前にして、引き気味になったり、攻撃的になったりしている。体面を失うことを恐れているのですね。
 2008年のグルジア問題(グルジアの自治州・南オセチア州で、グルジアからの分離独立、ロシアへの併合を求める動きに関連した武力衝突)で、ヨーロッパ大陸の庇護者としてのアメリカの信用はすでにいちじるしく傷付けられました。そのせいで帝国主義的な好戦性が戻ってきて、ウクライナで表面化しています。従来オバマが表明してきた「国民統合・経済再建」のドクトリンと正反対ですね。
 私としては、この方針転換が一時的なものにすぎず、現在のホワイトハウスの主が自らの外政の舵をきちんと握り直すことを期待します。今のところその兆候がまったく見えないのですが…。
 それでも私は、ウクライナへの軍事介入に対してアメリカ世論の多数派が依然として反対であることを踏まえ、自分の期待を完全に虚しいものとは必ずしも思っていません。

 この内容は、2014年6月の時点のものです。2014年6月時点ではヨーロッパ方面に関してはどう対応する気なのかわからないという、トッド氏の見立ては正しいと思いました。
しかし、2015年10月時点ではアメリカは現在ウクライナ、中東、南シナ海と3正面で対応を強いられています。現在の視点でみると、アメリカはどこを重視するかということでウクライナと中東から手を引き、太平洋方面に注力できるようにするために色々と画策しているのではないかと感じている次第です。

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