第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
西側メディアの非合理的な報道
(p.113-114)

 かくしてここ数ヶ月のうちに私は、微妙にリベラルなやり方で全体主義を行う、現実界から切り離された低開発国に暮らしているかのような悩ましい感覚を味わいました。
 いずれにせよ私は、ロシアの「ノーポスチ・ロシア通信社」のサイトをフランス語版で、「イタルタス通信」のサイトを英語版で読まなくてはなりません。なぜなら、西洋のどんなメディアも、ロシアの視点についてわれわれに情報をもたらす能力を持ち合わせていないからです。
 一例をあげましょう。まず地政学的な力関係の観点から分析するべき危機の只中で、フランスのものであったり、アングロサクソンのものであったりするとほうもない数の記事が、プーチン体制の「ホモフォビア」を叩きに叩くのを目撃するという、そんなことがありました。私は人類学者ですから、国際関係が合理主義的で現実主義的なロジックから逸脱し、未開社会ばりに道徳と道徳の間の対決に入っていくのを見れば、不安を覚えないわけにはいきません。
 文化的差異が大げさに話題にされ、しかも大抵間違って捉えられています。ロシアの体制の男性優位主義やアンチフェミニズムの問題が、クリントン前国務長官移管するプーチンの最近の発言で蒸し返されてしまいましたが、そのこと自体、ロシアにおける女性の地位についての根本的な無知に起因します。
 ロシアの大学では男子学生100に対して女子学生は130人を数えるのですよ。それがフランスでは115人、アメリカでは110人、そしてドイツでは83人です。
 この基準からみると、ロシアは世界でも女性の地位が最も高い国の一つであって、スウェーデン(男子学生100人に対して女子学生140人)に次いでいるのです。

 同性愛問題についての論評は、私は避けたくおもいますが、2013年冬以降に、プーチン氏が同性愛に対して否定的な発言や抑制する法律の制定をした(プーチン大統領「ロシアは同性愛嫌悪から自由であるべき」:ロシアの声)ことに対し、西側マスコミは批判的な報道を繰り返していました。しかし、冷静に考えるとロシアを貶めるための西側諸国によるプロパガンダのように思えてなりません。

 「あらかじめ裏切られた革命」を通読しましたが、ロシアは男性優位社会だというイメージを私は思っていましたが、大学進学率および女性の進学率の高さという客観的な数値から判断すると実は、ロシアは女性の地位が高く、活躍しやすい環境であるということがわかりました。
 物事については、マスコミが作り上げるイメージによってではなく、トッド氏のように客観的なデータをもとにして判断する必要があると改めて感じた次第です。

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