第4章 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
ロシア嫌いの「ル・モンド」紙
(p.111-112)

 ーあなたの見方によれば、ウラジミール・プーチンは紛争の激化ではなく、沈静化を狙うだろうということですね。では、西洋は何一つ理解しなかったのでしょうか?

 私は自分の「キャリア」の始めに、ソビエトシステムの崩壊を予言する本「最後の転落」を出しました。ですから私に関して、退行的なソ連贔屓などという謗りは見当はずれ。そういうのは勘弁して欲しいと思っています。
 一方で私は、この20年間い西洋のエリートたちのあいだにソ連贔屓どころか、正真正銘のロシア嫌いが育ったことを確認して愕然としています。なかんずくフランスのメディアがひどい。「ル・モンド」紙がポールポジションについて、錯乱の先頭に立っている。
 ウクライナ情勢を追いかけるのに、私は「ガーディアン」紙、「デイリー・テレグラフ」紙、「ニューヨーク・タイムズ」紙、「ワシントン・ポスト」紙、「シュピーゲル」紙、さらに反ユダヤ主義についてはイスラエルの「ハアレツ」紙などのウェブサイトを参照しなくてはなりません。ことごとくロシアに対して敵対的ですが、それでもこれらの新聞には正確な情報が含まれています。「ル・モンド」紙は最も基礎的な情報を正確に伝えることすらしない。

 ここまでご覧になった方ならおわかりかと思いますが、トッド氏の研究業績、言論発表および予測は、あくまでも統計データをもとにしてしているのです。日本においてもマスメディアの偏向ぶりが問題となりつつありますが、フランスにおいても、今回のロシア問題に関してはかなりの偏向報道(特に反ロシア)がなされており、しかも「ル・モンド」紙の場合は事実を正確に伝えるということすらできていないと酷評しているのには驚きました。

 現在、日本においても、TPPや南シナ海をめぐる情勢をはじめ、国内外で様々な出来事が報道されますが、マスメディアの報道には偏りがあるということを踏まえて全ては鵜呑みにせず、トッド氏のように客観的なデータや事実関係を重視して考え、判断していきたいと改めて思いました。

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