第3章 ウクライナと戦争の誘惑
「親EU派」と称される極右勢力
(p.99-100)
ユーロマイダンの革命と2014年5月25日の大統領選挙では、ウクライナの混濁したもう一つの側面が表面化しました。すなわち、それと比べると<国民戦線>(フランスの極右政党)がまるで中道左派のようにみえてしまうほどに超過激な、極右勢力の存在です。
その極右勢力がとくに激烈なのが、国の中でも最も貧しい地域の一つである西部地域においてですが、その地域こそ、ヨーロッパ人に好感を持たれている地域(宗教的な類縁関係のゆえに、とりわけポーランド人に気に入られている地域)なのです。
ガリツィア(首府はリヴィウで、リヴォウ、レンベルクとも呼ばれている)やヴォルイーニといった州は、重い過去からまだ立ち上がりかねているあの「中間ヨーロッパ」の真ん中にあるわけで、そこでは今なお、第二次世界大戦中の最も大きな強制収容所や死体投棄場所の門前で、平然とユダヤ人差別者であることを白状するような連中をみかけます。
彼らはEUの旗を打ち振りますが、あれは、われわれの民主主義的価値との親和性よりも、ポーランド人の従兄弟たちへのシンパシーや、ソ連兵相手に一緒に戦ったドイツ人たちの思い出に突き動かされてのことなのです。
もしかすると、小ロシア、つまりキエフの地域とポルタヴァの住民たちは、西部地域の同胞たちの重量がウクライナ全体にとっての致死量を超えていることに気がついて、親ロシア(オデッサ、ドネツク、南部と東部)のロシア語話者たちに近づくかもしれません。たぶんそれがリーズナブルな選択です。同じように、ウクライナが国家を営むという文化においてロシアに追っているものすべてを受け入れるのもリーズナブルです。
この段落を読み解くうえで大事なのは、ウクライナの地図を参照することと感じました。
(出典:ウクライナ共和国ーWikipedia)
リヴィウ州は、上記の地図で「22番」、ヴォルイーニ州は「3番」、いずれもウクライナ西部でポーランドに国境を接している地域です。
(出典:ウクライナ共和国ーWikipedia)
こちらはロシア語を第二公用語として賛成する人々の割合ですが、リヴィウ州、ヴォルイーニ州はわずか数%と、他の地域と比較して飛び抜けて低いです。一方、東部、南部地域は半数以上の人々がロシア語を第二公用語として賛成していることが伺えます。これはリヴィウ州、ヴォルイーニ州は歴史的にポーランドの領土になっていた時期があり、その影響を受けている可能性もあります。
貧しくて過激な極右勢力がおり、歴史的に他国領土の時期があった西部、ロシアの兵器工場があり、親ロシア的な東部に対して、トッド氏によると、人口最多の中部キエフ州はどうやら中間派っぽいという指摘のようです。