第2章 ロシアを見くびってはいけない
KGBはロシアのエリート養成機関
(p.89-90)

ーくどいようですが、ソビエトの政治警察であったKGB出身の大統領というのは、いかにしても旧式すぎるでしょう。

 だからどうだというのですか?KGBとその現代版であるFSB(ロシア連邦保安庁)は、ロシアのエリート育成機関なのです。
 ロシア史の専門家であるあのエレーヌ・カレール=ダンコースが皮肉を込めて言っていましたよ。KGBやFSBはフランスにとってのENA(国立行政学院)に相当する機関だとね。あの国の荒っぽい体質の一部分だと言っておきましょう!

 西側マスコミの報道に常に接し続けている日本国民にとって、プーチン大統領はインタビュワーのような認識だったと思います。しかし「あらかじめ裏切られた革命」で示されたソ連崩壊後のロシア共和国では、政府高官たちのほとんどが「体制内マフィア(利権にうごめく連中)」と化しており、西方軍の司令官に至っては東欧諸国から撤退する際に大量の最新鋭兵器を組織的に横流しし、代金を着服していました。
 そうした中で唯一KGBだけが、金銭的な不正はほとんど行っていなかった上、ソ連崩壊後の社会情勢を予測し、その上で中長期的視野に立ち様々な政治工作を仕掛けていたことが記されています。
 トッド氏のいう通り、KGBとその現代版であるFSB(ロシア連邦保安庁)は、ロシアのエリート育成機関であると言わざるを得ません。

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