第2章 ロシアを見くびってはいけない
国内で支持される権威主義的デモクラシー
(p.88)
その社会では、ソ連時代から継承された高い教育水準が保たれていて、男子よりも女子のほうが多く大学に進学しています。また、人口の流出よりも流入のほうが多いことからも、ロシア社会とその文化が、周辺の国々の人々にとって魅力的なのだということがわかります。
これが、他に良い言い方がないので私が仕方なく「権威主義的デモクラシー」と呼ぶものにつながっているのです。すなわち、強力で粗暴でさえあるが、それにもかかわらず大多数の国民から暗黙の支持を受ける体制です。
「あらかじめ裏切られた革命」でもご紹介いたしましたが、ソ連が崩壊し、ロシア共和国が成立した1991年には、西側諸国の間では西欧型民主主義が成立するのではないかと思われておりましたが、早くもその2年後の1993年、ジリノフスキー氏が台頭しはじめた頃にはロシア国民からは「ロシアの伝統に基づく政治を行うべきである」という声が強くなっていました。
一方、ロシアは大学進学率が高い(69.0%、世界第10位)ことからもわかるように教育水準自体は大変高いのです。私見ですが、西側マスコミがロシアについて誤解している理由の一つに「教育水準が高い=西欧民主主義を採用する」という考えを持っていたことにあるのかもしれません(だからこそトッド氏が現在のロシアの体制のことを仕方なく「権威主義的デモクラシー」と呼ぶことにしているのではないでしょうか)。