第8章 ユーロが陥落する日
もし私がフランス大統領だったら…
(p221-222)

 -あなたが共和国大統領に選ばれたと仮定して、主要政策を四つ挙げてみてください。

 1、欧州の保護主義的再編成について、ドイツ相手にタフな対話を始める。
 2、主要銀行を国有化する。
 3、政府債務のデフォルトを準備する。
 4、国民教育相統括下の学校制度に新たに10万のポストをつくる。

 -憤るものたち、全てを失った時には彼らだけが残るのでしょうか?〈ステファン・エセル「怒れ!憤れ!」(村井章子訳、日経BP社、2011年)を念頭に問いかけたであろう〉

 憤る者たちといっても、我々のヨーロッパ社会ではその人数が多くありません。

 
 第一の政策は、本書で繰り返し書かれておりますが権威主義を基調とするドイツを唯一暴走阻止できるのがフランスだ、ということを、第二と第三の政策は、政府を縛り付ける寡頭富裕層に対しての反撃体制を整備することをそれぞれ示しております。第四の政策については私には意図が分かり兼ねますが、おそらくしっかりとした教育投資を行うと捉えました。

 なお、記者が質問した「憤るものたち〜」のくだりは、フランスのレジスタンスでのちに外交官となったステファン・エセル氏が、著書「怒れ!憤れ!」において、非常に豊かな層と非常に貧しい層の格差が広がっている現状をなんとかするには”フランス人がかつてのレジスタンスで活動した時と同様に憤ることが大事”と主張し、アラブの春やニューヨークのウォール街占拠運動に多大な影響を与えた内容です。
 それに対してトッド氏の回答は、フランスは第二次世界大戦当時とは異なり、高齢化した社会であるため憤る活動を実行する人数自体が、アラブ諸国の「アラブの春」と異なり少ないという意味です。

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