第8章 ユーロが陥落する日
左翼こそ保護主義を主張せよ
(p201-203)

 -保守派が保護主義に関するあなたの考え方をご都合主義的に取り込むことを心配していませんか? ニコラ・サルコジが、国民を「保護する必要」ということを言い出しています。
 
 そういう側面から問題を立てたことはありません。予想しているのはむしろ激烈な選挙戦(このインタビューは、2012年4月の仏大統領選の約4ヶ月前に行われた)で、それを通じて、左翼が改めて左翼に立ち帰ることがありそうだと思っています。
 実際、ある種のファンタジー(「左翼の左翼」、トロツキズム等)が消えて、これまでにあまり例のない規律が徹底し、選挙で保守派と対決する陣形が整ってきているように見えます。
 向かい側には、保守派が-ニコラ・サルコジといいう大統領の無意味さにもかかわらず-存在しており、その支持層を構成する二つのカテゴリー、国民運動連合(UMP)と国民戦線(FN)はこのところ、非常に近い関係になりました。両者を隔てる壁に多くの孔が開いていることは明白です。
 ですから私は、イデオロギーの面で、この保守勢力に対して左翼は正面から激突するだろうと思います。経済危機、「欧州統合至上主義」的な自由貿易の正当性喪失、国の指導層への信頼の破綻などの結果、左翼は率直に左翼たらざるを得ない状況だからです。
 こうして攻勢を強めるように左翼はプレッシャーを受け、真の敵を指定しなければならなくなる。真の敵、それは新たな寡頭制、新たな権力システム、階級間の新たな力関係です。
 フランスの左翼は、状況それ自体の拘束力によって、社会的でもあり自由主義的でもある姿勢をとりつつイエスマンに終始するというような状態から、抜け出さざるを得なくなります。
 対面にある保守派は、今や何一つ具体的な提案を持たず、それゆえにナショナル・アイデンティティだの、「イスラームが…」だの、「アラブ人が…」だのといったテーマをまたも持ち出すに違いないのです。
 この保守派はかつて人びとが「大金融資本」と呼んだものに緊密に結びついていて、手っ取り早く言うと「フーケッツ」(パリのシャンゼリゼ通りの贅沢なカフェレストラン。2007年の大統領選の直後、サルコジが富裕層を象徴するこの店で勝利を祝い、一般の顰蹙を買った)スタイルの保守なのだが、きっとポピュリズムをやってのけるでしょう。人びとの間に瀰漫している恐怖心と、有権者層の高齢化という要素にかけるわけです。実際、現在の有権者層は、フランスでは前例がないほど高齢化していますから。
 というわkでえ、状況全体のこの混乱の中で、ニコラ・サルコジが口達者なお抱え原稿書きであるアンリ・ゲノー(1957年生まれの国民議会議員で、評論家でもある)に頼んで、土壇場で繰り出す嘘っぱちの演説をいつものようにでっち上げ、保護主義のポーズをとることはたしかにあり得ます。ゲノーは2007年の大統領選の際にそれをやったし、さらに以前にはジャック・シラクのために同じことをやってのけました。前例を思い出しさえすれば、そうした詐欺は無効化できるはずです。
 しかし、もしかするとあなたの言う通りかもしれない。すでに誰かがスターティングブロックにいて、おそらく今にもデタラメを繰り出そうとしているのかも!

 
 2012年のフランス大統領選挙戦において、左翼であるフランス社会党のオランド候補が大統領に当選しました。その勝因はトッド氏の見立てである「左翼は率直に左翼たらざるを得ない」点、すなわち寡頭富裕層に対して「富裕税」を課税することを主張し、それが国民に人気となったためです。
 しかし、オランド大統領就任後の顛末は、第5章 オランドよ、さらば!に記された通り、寡頭富裕層のいうがままの状況となってしまい、歴代大統領の中で支持率が最低を記録する結果となってしまいました。