第7章 富裕層に仕える国家
政府債務は返済されない-紙幣を増刷するか、デフォルトを宣言するか
(p194-195)

 -ところで、なぜそんなにユーロのことにこだわるのですか?
 
 特にユーロにこだわってはいません。私は自由貿易体制の中ではユーロは死に体だと言っているのです。ここでは将来の予言はしません。現在を描写しているのです。
 いずれにせよ、喫緊の問題はユーロではなく、債務危機です。
 明晰になろうではありませんか。主権国家の政府債務が返済されることは絶対にないのです。ドイツ国債でさえ怪しまれ始めているのですよ。
 われわれには二つの可能性があります。「輪転機を回す」か、債務のデフォルトを宣言するかです。
 私は後者の方がいいと思います。外科手術のようにスッキリしますからね。債務デフォルトは民主主義的な理想によって国家を再征服する端緒となるでしょう。現状では、国家は金融寡頭支配層によって略奪され、金を脅し取られています。

 
 債務危機が到来した場合、普通の国ではトッド氏の申し上げた方法が使えますが、ユーロを採用した国では輪転機を回すという選択が取れず、債務デフォルトした場合はユーロ決済が止まる上、ユーロの脱退に関する明確な手続きや規定が定められていなかったという事実が2015年のギリシャ危機で判明しました。そういう意味では政府をトッド氏の言う寡頭富裕層に縛り付けるツールとしてユーロは有効であるという見方もできます。

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