第7章 富裕層に仕える国家
緊縮財政は「間抜け者の保護主義」
(p188-189)

 -景気浮揚策がそんなふうに債権者たる富裕層に有利なら、逆に緊縮策は貧困層に利益をもたらしますか?
 
 確実にいえるのは、たとえばマルティーヌ・オブリ(リール市長、社会党内左派の代表と目されている、1950年生まれ)が体現しているような反緊縮の言説が完全に時代遅れだということです。
 ヨーロッパ各国の政府は、景気浮揚が中国とその他の新興国の経済ばかりを浮揚させるということを遂に理解しました。しかし依然として、国家レベルでも、セクター別でも、あるいは欧州レベルでも、保護主義の措置はどんなささやかなものでも拒否しています。
 この条件の下では、緊縮は中国の成長に寄与することへの受動的拒否、すなわち私が「間抜け者の保護主義」とよぶ第三の道の選択であるかのようにも見えます。悲しい真実ですね、われわれは間抜け者たちに統治されているのです。操縦席にいる連中には、やること成すことの責任を取ってもらいたいものです。
 もっとも、私はメランション派(ジャン=リュック・メランションはフランス左翼の有力政治家、1951年生まれ)ではありませんよ。統治にはエリートが必要だと信じているのでね。問題は彼らを吊るすことではなく、正気へと、分別へと導くことです。
 フランソワ・バロワンやヴァレリ・ペクレス(いずれもサルコジ政権で閣僚を務めた著名政治家)は無能を絵に描いたようなエリートだけれど、たぶん誠実に、均衡予算に戻ればわれわれのすべての問題が解決すると確信しているのでしょう。
 とはいえ、各国政府が無意識にもう一つ別の選択をした可能性も否定はできません。つまり、仮に景気浮揚策をとることができず、保護主義も考えられないとなれば、予算の削減が唯一、貿易黒字の大きい輸出国-大雑把にいってドイツと中国です-をある意味で屈服させ、交渉のテーブルに引っ張り出す手段でしょう。

 

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