第7章 富裕層に仕える国家
需要不足を補って破綻したサブプライム・ローン
(p185-186)

 -寡頭支配者たちは他のカテゴリーの者よりも失うものをたくさん持っていますよね。非合理性ですべてを説明できますかね?

 社会的なアクターの行動は合理的なものと非合理的なものの間で揺れ動きます。
 2008年の危機の出発点は、中国その他の国々が、低賃金のおかげで世界の生産の内のますます大きな部分を占有して、それが富裕な国の中での所得の抑制、したがって需要の不足を生み出したというところにありました。その結果、世界の生産高は増大するのに、賃金は低下していったのです。
 ほかでもないこの文脈の中で、通貨における支配的なパワーであるアメリカ合衆国が抵当権付きローンの狂気じみたメカニズムを発見したのでした。アメリカの多くの世帯がより広い家を買うためだけでなく、中国製品を消費し続けるためにも借金を負っていたのです。
 そして、2008年の危機の前夜、アメリカの貿易赤字は8000億ドルに上っていました。このシステムは驚くべきものです。アメリカはその帝国的なポジションを利して、この赤字を世界規模でのケインズ的レギュレーターとしたのです。
 かくして債務が、需要不足を埋め合わせる役目を果たすことになりました。
 もちろんローンのメカニズムは最後には弾け、所得も輸入も崩壊します。こんな文脈の中では、G7、G8、そしてG20が準備した景気振興プランは合理的なリアクションでした。ケインズの勝利と国家のカムバックが歓迎されました。

 
 2008年に弾けた「リーマンショック」の元凶となった、サブプライムローンのシステム、およびその前提条件となった事柄について解説されています。
 価格が極端に安い中国製品が大量に供給されることで賃金が低下し、結果として市場の需要が低下したので、需要を喚起するために借金をしてまでアメリカの消費者が消費するというやり方は、まさにケインズ経済学の基本ともいえる「有効需要を意図的に創出して不景気を乗り切る」という方法に他なりませんでした。
 しかし、この方法には重大な問題があるとトッド氏は指摘していますが、それは明日(12/15)分でご紹介いたします。

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