第7章 富裕層に仕える国家
政府債務は富裕層の集金マシーン
(p180-182)
-もし国家が債務を追わなかったら、貧しくなることはなく、負債を返済することで誰かを富裕にするということもないでしょうに。
その考えは完全に検討はずれです。なぜなら、債務を負うということの本当のメカニズムについて思い違いをしているからです。
人は政府債務というものをたいてい借りる側に目をつけて眺め、借りる側が見境もなく支出したのが悪いと判断します。諸国民は支払う義務を負っている、なぜなら掛け買いで暮らしてきたのだから、というわけです。
ところが、債務の出発点のところにいるのは、これはもう基本的に借りてではなく、自分たちの余剰資金をどこかに預託したい貸し手たちです。
マルクスが「ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日」で明察したように、金持ちたちは政府債務が大好きなのですよ! 借金をする国家は、法的拘束の戦友のおかげで、金持ちたちが彼らのお金を最大限安全に保有し、蓄積できるようにしてやる国家なのです。-つまり、財政赤字は各国政府のせいではない、政府は借金するように促されたのだから、というのですか?
もっとも、政府を最富裕層の手の中に導いたのは、ほかでもない政府の税制上の選択です。「不当債務」(未翻訳)という本の中で著者のフランソワ・シェネ(フランスの経済学者、パリ第一三大学教授)が的確に指摘している通り、フランスでは超富裕層が彼らになされる税率の引き下げの恩恵に与り、まさにそのおかげで国家に対し、減税で国庫に入らなくなった分の資金を貸与するという現象が起こっています。
我が国では1793年のポンピドゥー法以来、国家が貨幣創出を自ら禁止していますが、それがフランクフルトに所在するヨーロッパ中央銀行をめぐる神話によって補強されて、イデオロギー的に恐るべきものになってしまいました。ヨーロッパ中央銀行は、フランスという国家の手の届かないところにあると考えられているのです。
かくして毎年、フランス人は付加価値税と直接税という形で2500億ユーロを持って行かれ、そのうちから500億近くが利子として、すでに過剰にお金を持っている人々の手に渡るのです。そのうえその人々の3分の2は外国人です。
なにしろこれはグローバルな浮かれ騒ぎで、富裕なフランス人は最優先の待遇は受けられないとしても、その代償として、諸国家と諸国民の服従をたらふく腹に詰め込むことができるのです。このような現実があるのですよ。
この現実を隠す機能を果たしているのが、そこしれぬ債務だの、国の破産の可能性だの、トリプルAを失わないようにする必要性だのを振り回し、人々を不安に陥れると同時に好んでモラルを説くタイプの言説です。現行システムの論理的でリベラルな外観の背後で国家が、最富裕層の利益のために人々から金を脅し取るマシーンになっています。
政府債務のカラクリという点について触れられています。興味深いのは「国家が貨幣創出を自ら禁止している」という点です。おそらくトッド氏は政府が通貨を発行してしまえば債務問題は解決する、と考えている節があるように思います。
日本においては紙幣は「日本銀行券」で日本銀行が発行しています。一方、補助通貨として額面の20倍(20枚)まで通用する硬貨は日本政府が発行しています。つまり、日本の財政問題も、極端な話、「1京円」という通貨を政府が発行してしまえば「20京円」までは法的に通用するのでそれを日本銀行に渡してしまえば財政問題は解決する、ということになります。しかし、そんなことをする政治家や政府は絶対に寡頭富裕層は許さないと考えられます。