第7章 富裕層に仕える国家
国ごとに異なる形での寡頭支配-左翼が見落としているもの
(p178-180)

 -それは特定の土地から離れたフループ、10年前にみんなをぎょっとさせていた表現を用いれば、「グローバル化されたエリートたち」のことですか?

 それもまた現代が生み出した幻影です。過剰な怪奇です。人びとは、グローバル化した自由経済がトランスナショナルな寡頭支配を生んだと信じ込んでいますね。人類学的な意味における文化という様子を捨象してしまうから、実はいくつもの異なる寡頭支配層があり、その間の関係は仮借のない力関係によって構造化されているという事実が見えなくなるのです。
 フランスの寡頭支配層の特異性は中央官庁上層部との近さにあります。そのメンバーは必ずしも資産家の子女ではないが、しばしばエリートの高等教育機関であるグランセコールの出身者であり、一般にひどい英語を話し、その生活様態において信じ難いまでに典型的なフランス人で、そして本物の主人たち、つまりアメリカの寡頭支配者たちに騙され続けている。
 スタンダード&プアーズ、ムーディーズといった大手格付会社への服従は、アメリカの寡頭支配層への服従にほかなりません。
 ドイツの寡頭支配層はというと、これは支配のシステムに新しく参入してきたわけですが、このところフランス人たちをただの臣下のように扱う習慣を身につけ始めています。
 中国の寡頭支配層の特徴は共産党との緊密な絡まりにあります。世界の寡頭支配層のこうした異質性を、ほとんどの論者が見落としています。
 左翼の論客たちも、ヒエラルキーの頂点に平等性があるかのような幻想を培っている。ところが、世界の社会構造の上の方も下の方も、不平等によって特徴づけられているのです。

 
 トッド氏によってこうして各国の富裕層の特徴を書き出されてみると、確かに各国によって異なるし上下関係があり、不平等によって特徴づけられているという着眼点は鋭いと思いました。
 日本の場合においては、歴史的伝統がある名家出身と、下層から成り上がった人間の2系統があるように私には感じています。ただ、彼らも最終的にアメリカの寡頭支配者たちに従っているように見受けられる点はフランスとかなり似たような感触を受けました。
 

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