第7章 富裕層に仕える国家
格差拡大は倫理ではなく経済の問題-ピケティ学派の功績
(p177-178)

 -では、もし富裕層の富裕の程度が下がれば、現在よりも良い状況になるというのですか? いいかえれば、これは果たして倫理の問題でしょうかね? むしろ経済の問題でしょうに。

 私の分析にはどんな倫理的な狙いもありませんよ。1990年以降、金融取引の開放とその金融フローの自由化が実際に不平等を信じられないほど増大させました。
 この件について、私はトマ・ピケティの学派に敬意を表します。彼らが行った世界規模の比較研究が、アメリカとイギリスで「1%」の超富裕層というテーマが浮上することに決定的に寄与したようなのです。
 システムがどんなに不透明に見えても、あるグループがどのようにして富の大きな部分をコントロールしているかを分析すれば、システムの実態に近づくことができます。
 そうだとすれば、本質的な問題は、市場自体の問題ではありません。寡頭支配層こそが、そして寡頭支配層が国家との間にもっている関係こそが、本当の問題なのです。したがって、この寡頭支配層を特定し、その構造、その生活様式、その構成を分析する必要があるのです。

 
 第6章の最後でもご紹介しましたが、トッド氏の言う通り、1990年以降から急激に富裕層の富が膨れ上がってきている様子がThe World Wealth and Income Database からもうかがえています。
 トッド氏はこの原因は、寡頭支配層と国家との間に持っている関係だと述べております。少なくとも格差の拡大は経済の問題だと私も思います。

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