第7章 富裕層に仕える国家
「市場」とは「最富裕層」のこと
(p175-176)

 -今や国家が「市場」とせめぎ合っているといっていいでしょうかね?

 「ブリュッセル」「マーケット」「金融機関」「アメリカの格付け会社」など、人をたぶらかす概念に騙されないようにしましょう。そういった付け鼻のようなインチキな言葉は、最富裕層が世界の至る所で政治権力を奪取している事実をカモフラージュしています。
 少額預金者の預金を保護するという口実を掲げていますが、市場と呼ばれているのは単に、国家を玩具にする最富裕層のことにほかなりません。金持ちたちは国家を敵にして戦いはしません。彼らが戦うのは、国家を従来以上によくコントロールするためです(ジェームス・ガルブレイズ著「捕食国家」〔フリー・プレス社、2008年、未翻訳〕を参照されたし)。
 ある種の人物たちが国家行政機構の上層部、アメリカの大企業、ブリュッセル、さらに今日では各国政府自体の間をどう行き来しているかを観察しさえすれば、金持ちたちがまんまと成功していることがわかります。同じ一つの階級が市場と諸国家をコントロールしている以上、市場と国家の間の対立にはもはや何の意味もありません。

 グローバル化した社会は、ヒト、モノ、カネの移動もグローバル化しました。1%の富裕層がネットワークを世界中で形成し、市場と国家を管理するという説は掲載する媒体を間違えるといわゆる「陰謀論」と捉えられかねない要素をはらみます。
 しかし、トッド氏の場合は本書の紹介でも明らかなように、様々な公的機関が公開している統計諸表をもとにして上記を論じている点に留意する必要があります。

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